基礎知識

土地活用プラン実例~賃貸マンションの場合~


1.計画地の現状

(1)計画地の概要

土地Aは、面積50坪、166㎡という首都圏でも人気の高い東京メトロ南北線麻布十番駅から徒歩4分という好立地です。

用途地域は、商業地域で、建ぺい率80%、容積率400%で前面道路の幅員は10mです。

 

(2)土地Aの現状

土地Aには、築50年、住戸数6戸の木造の賃貸アパートがあります。

間取りは1LDKで、浴室が共有で、月額賃料は7万5千円です。

年数の経過をへて、柱が少しずつ傾き、壁にはうっすらと亀裂が入り始めています。

毎年、五月雨式に修繕(リフォーム)費用がかさむものの、賃料をあげるわけにもいかずせっかくの好立地を活かしきれていないパターンです。

 

(3)入居者の立退交渉

①交渉手続きの始まり

建物・設備ともに古い上に使い勝手が悪いので、入居後はずっと継続して契約ではなく2~3年ごとに入れ替わるような状態です。

ただ、麻布十番駅徒歩4分という好立地のおかげか、退去後もすぐ入居者が見つかる状態です。

修繕費がかさむこと、建物が古いことで家賃が挙げられないことがデメリットとしてあげられます。

木造で建物が古いので、大きな地震があったら倒壊してしまうのでは、という心配で建替えを検討することにしました。

アパートの入居者は借地借家法で守られているので、アパートの老朽化を理由に退去をせまることができません。

土地オーナーは、事前に顧問弁護士事務所との連携により、契約書や提示する文章の内容につきリーガルチェックをしてもらい、立退きについて計画を建てました。

土地オーナーは入居者6戸を戸別訪問し、建物の現状への理解と建て替えの計画を告げ、期間の余裕を踏まえて退去の依頼をしました。

 

②立退料の支払い完了まで

入居者との繰り返しの話しあいを経て、誠実な折衝を重ねた土地オーナー。

立退料として現在の賃料の4か月分を基準として、更に引っ越し費用相当額を加味して、1世帯当たり40万円を払うことで合意しました。

6戸あるので240万円です。

なお、立退料については、家賃、居住年数、その他色々な基準で検討するため、一律の相場はありません。

別途立退き交渉の記事も書いておりますので

よろしければそちらもご覧ください。アパート・マンションの建て替え時の立退き交渉術

 

2.賃貸マンション建設計画

(1)建築時の基本プラン

賃貸住宅の建物構造は、鉄筋コンクリート造とし、容積率をめいっぱい使って6階建てにしました。

階高は3mなのでおよそ18mの高さになります。

工期は基礎工事に3か月、建築工事に6か月で合計9か月になりました。

 

【賃貸マンション建築計画】

敷地面積 165㎡ ・ 50坪
建ぺい率・容積率 80% ・ 400%
建築面積 132㎡ ・ 39坪
施工床面積 825㎡ ・ 249坪
延床面積 742㎡ ・ 224坪
容積対象面積 660㎡ ・ 199坪
専有面積 600㎡ ・ 181坪
構造・規模 鉄筋コンクリート6階建
高さ 18m
住戸(2階から6階) 20戸@25㎡ ・ 7.5坪
店舗(1階) 100㎡ ・ 30坪
工期 9か月

 

今回の土地Aの場合、事務所系がいいのか、住居系がいいのかマーケティング調査をした結果、住居系の需要が高いことがわかりました。

設計士との協議に2か月の期間をかけて、建築するマンションのコンセプトは「デザイナーズマンション風で若い年代に人気の建物」となりました。

都心でターゲットが若い年代ということもあり、セキュリティ面でオートロック、構造も耐震を意識したものにすることに決定しました。

基本価値にくわえ、プランニング、設備仕様設定と順番に進めていき、具体的にマンションの設計が進んでいきました。

具体的には、2階から6階が居住用、ターゲットは学生や若い単身者です。

住戸は標準より少し広めのワンルーム、床面積は25㎡としました。

住戸数は20戸です。

1階部分はコンビニエンスストアへの賃貸を予定しており、店舗併用賃貸住宅というくくりになりそうです。

設計段階からコンビニエンスストア数社に打診すると駅近という立地が功を奏したのか出店店舗も仮決定となりました。

 

(2)建築計画のスケジュール

この土地のオーナー、土地活用次郎さんの自己資金は1,000万円です。

総事業費は計画通りであるならば2億3,000万円のため、2億2,000万円の融資を金融機関から受ける計画です。

予定としては、9月に基本設計の図面作成開始、12月には実施設計に着手、そして翌年2月に建築確認書を取得予定です。

3月からは建築工事に着手し、工期が9か月になるため竣工は12月予定となります。

 

①建築の確認済証の取得

計画地では、高さ10mを超える建物(中高層建築物)を計画する際は、条例により建築の概要を記載した標識を設置し、近隣住民に建築計画について事前に説明しなくてはいけません。

多くの自治体で、建物の建設にあたり、計画地と同様、建築物の標識設置による周知と近隣住民への説明を条例等により建設主に義務付けています。

この自治体が定める手続きを経た後、建築確認申請を行うことができます。

※近隣住民への建設の説明については 近隣住民とのトラブル回避法 をご覧ください。

②着工

建築の確認済証を取得し、労働基準監督署、その他関係先への届け出、現場での建物配置確認(地縄とよばれています)地鎮祭を経ていよいよ建築工事に着工します。

 

③中間検査、完了検査、施主検査

3階建て以上の建物は「基礎工事」と「2階の床や梁の配筋工事」の段階で確認機関の中間検査を経て中間検査合格証を取得します。

また、工事完了時にも完了検査を受け、合格の跡に検査済証を取得します。

施工会社による完了検査ののち、発注主、設計者などによる完了検査も実施します。

1階のコンビニエンスストアは完了検査後速やかにテナント工事を施工し、早期オープンを目指しています。

影響のない範囲で、2階より上の賃貸住宅の建築と並行してコンビニを運営することもあります。

最後に、オーナーがマンションの出来栄えを検査し、不具合の補修、そこを改修したら建物の引渡しを受けます。

9月 設計事務所の選定
9月 基本プラン作成
12月 建設会社選定
12月 近隣住民に建築計画を説明
翌年2月 建築の確認済証を取得
翌年3月 建築工事着工
翌年6月 中間検査合格
翌年8月 マンション上棟
翌年12月 完了検査を受けて検査済証を取得
翌年12月 施主検査で不具合を補修
翌年12月 マンションの引渡し

3.賃料の査定

(1)住宅部分の賃料査定

①住宅部分の賃料

賃料は、計画地周辺のマーケティング結果から導き出されます。

施工会社がいくら強気でも、冷静に賃料設定しなくてはいけません。

賃料は計画地周辺のマーケティング結果から導き出されます。

近隣事例で気を付けなければならないのは、収集した周辺辞令の賃料が「募集賃料」なのか「成約賃料」なのかです。

「募集賃料」は単なる大家さんの希望家賃でしかない場合もあります。

強気の賃料設定をしても、実際に入居者が決まらなければ適正家賃とはいえず、実際にいくらで賃貸契約が成立したかを見ることが大切です。

賃貸の募集開始から満室になるまで何か月かかったかも大切な調査項目です。

数か月も入居者が決まらなかったら、設定賃料が高かった可能性があります。

賃料は安全最優先で手堅く判断しなければなりません。

 

②新築プレミアムと空室率の関係

新築から5年くらいは、「新築プレミアム期間」と呼ばれ高い入居率が期待できます。

しかし、それ以降は近隣にできるであろう新築物件との競合、建物設備の老朽化、陳腐化による空室率を見込んでおかなければなりません。

 

③賃料の下落率、経年変化と賃料の見直し

新築建物をこまめにメンテナンスし、管理も良好ならば当初の賃料を一定期間は維持できます。

しかし、経年劣化は避けられず、賃料も徐々に見直しを求められます。

右肩上がりの賃料上昇は見込まないことが望ましいと考えられます。

【賃貸マンションの住宅部分の賃料設定等】

項目 単価等
賃料単価 月額1万円/坪
月額収入(満室時) 150万円
空室率 2年目から10%
賃料の見直し(下落率) 5年目から→2%引き下げ
10年目から→5%引き下げ
20年目から→10%引き下げ

 

(2)店舗部分の賃料査定

入居するテナントは、賃料を売上金額の10%前後を上限として出店を検討することもあります。

この方式で計算すると売上高が1坪あたり1ヶ月で20万円見込めるなら賃料は月坪(1か月あたりの賃料の坪単価)で2万円が上限となります。

今回は周辺の調査により、坪単価2万円に設定すると、月額賃料は60万円になります。

出店を検討するテナントは月額600万円以上の売り上げを見込めるかをマーケティングします。

土地活用次郎氏は、数社のコンビニエンスストア運営会社と交渉し、月坪で2万円の賃料(税込)で、10年間は変更(減額)なしという条件を提示した大手のコンビニエンスストア運営会社と賃貸契約を結ぶことにしました。

なお、店舗やビルの賃料には消費税がかかります。

住宅の賃料は、特別措置で非課税となっています。

 

4.ランニングコスト

(1)賃貸の運営管理

賃借人が決まれば、賃料請求やクレーム処理、賃料滞納時の督促、そして退去時の原状回復工事など、様々な賃貸管理業務が発生します。

経験の少ない土地オーナーでは対応が難しい業務もあります。

そのため、土地オーナーは専門の管理会社に賃貸の運営管理を委託するのが普通です。

管理費は賃料の5%程度が目安となります。

土地活用次郎氏のケースも収受賃料の5.5%(消費税10%込み)で、管理会社に賃貸管理を委託しました。

 

(2)ランニングコスト

賃貸経営を始めると、建物をはじめ様々なコストがかかります。

建物の維持管理費、日常の清掃費用、原状回復費用、設備の点検費、メンテナンス費用、共有部分の水道光熱費、長期修繕費用の積み立て、固定資産税や都市計画税などです。

 

項目 単価等 月割の費用
賃貸住宅部分管理費 収受賃料の5.5% 82,500円
日常清掃費 2時間×3回/週 36,000円
定期清掃費 年2回 10,000円
植栽メンテナンス 年2回 8,000円
エレベーター点検費 毎月 60,000円
自動ドア点検費 年4回 6,000円
共有部電気水道料 毎月 20,000円
小修繕費 毎月 10,000円
土地・建物固定資産税 年1回 150,000円
  小計 382,500円

 

土地や建物の固定資産ぜう、そして保険料には消費税はかかりません。

逆に、賃貸の管理費や、清掃費などの費用については消費税がかかります。

修繕費については、日常の入居中の小修繕費と、共用部分等の給排水管類の修繕を見込んでおきましょう。

また、建築したあと、築後10~15年程度で大規模修繕を行うため積み立てておくのが望ましいといわれています。

大規模修繕の費用を1,000万円とすると、15年として、毎月約6万円の積立金が必要になります。

これは、毎月の収益の中から積み立てることが望ましいです。

 

なお、損害保険料(火災保険。地震保険)は支出項目に入りませんが、

火災保険は最長10年、地震保険は最長5年間の保健機関で、融資時に一括で支払う方式を採用したので、当初に支払った保険料を分割して経費として計上します。

これは帳簿用の経費で、実際に毎年出費する経費ではありません。

 

5.賃貸マンション建設計画の事業収支

賃貸経営の事業収支計画を作成するときには、基本的なポイントがあります。

「総事業費」「収入(賃料)」「返済(金利・元金)」の3つです。

これに加え、事業開始後に必要なランニングコストについてもあらかじめ見積もりをしておく必要があります。

これを「事業収支計画の3つのポイント+アルファ」といいます。

これらのポイントを精査し、無理や無駄を省いたうえで、実現性の高い事業収支計画をつくらなければなりません。

事業収支は、収入から返済金とランニングコストを差し引いて算出します。

事業収支を評価する指標として、

①収入を総事業費で割って算出する表面利回り

②収入から支出を差し引いた収益を総事業費で割る実質利回り の2つがあります。

立地や規模、どの程度手堅く賃料を設定しているか、相続税の節税対策などの諸条件があるので、事業収支の指標は一律にはいえませんが、一般的には表面利回りは8~12%、実質利回りは3~6%の範囲で推移するケースが多いようです。

【事業収支の計算式】

事業収支=収入(賃料)- 返済(金利・元金)- ランニングコスト

 

あくまでも表面利回りや実質利回りは一つの目安で、この指標にとらわれない戦略もあり得ます。

たとえば、実質利回りが低い場合、管理会社へ支払う管理費やランニングコストをおさえることで実質利回りを引き上げることができます。

しかし、賃貸管理や建物のメンテナンスがおろそかになってしまうと長期的には家賃の下落や空室率の上昇、建物の劣化につながる恐れもあります。

表面利回りが低い場合、投下した事業費に比べて受け取る賃料が低いということになるので、計画の内容を見直し、建築工事費を抑えるべきとも考えられます。

ただし、これも高品質で、耐久性の高い建物なら新築プレミアムを長期間いじできることにより賃料の下落を抑え、メンテナンス費用の削減にもつながるなど、長期的視野によれば収益性が高いこともありえます。

また、表面利回りの計算も実際に必要な建築費だけをもとにして計算する場合と、設計料や測量費、既存建物の解体費などを含めた総事業費を基にするのとでは数値が変わってきます。

土地活用次郎氏のケースでの事業収支は、収入が住宅と店舗の合計で年間2,520万円です。

そして、返済金や管理費、メンテナンス費用などの支出が1,573万円で、差し引きの収入は947万円です。

表面利回りで10.96%、実質利回りでは4.12%となりました。

 

【賃貸マンションの初年度事業収支・税込】

総事業費             ① 2億3,000万円
内訳    建築工事費 1億9,800万円
      設計・監理費 990万円
      その他経費 2,210万円
借入金 2億2,000万円
収入    住宅部分賃料 1,800万円
      店舗部分賃料 720万円
      小計         ② 2,520万円
支出    借入金返済 1,114万円
      管理費(収入の5.5%) 99万円
      諸経費 360万円
      小計         ③ 1,573万円
収支④=           ②-③ 947万円
表面利回り=         ②÷① 10.96%
実質利回り          ④÷① 4.12%

 

6.おわりに

この記事では、土地活用次郎さんの賃貸アパートの建替え事例をもとに説明してきました。

じゃあ具体的にここはどうなの?あれはどうなってるの?もし自分ならどうなるの?

土地活用次郎さんと自分はここが違うがその場合どう変わってくるの?という疑問やご相談に関しては

ご相談窓口までご連絡ください。→ 土地活用の窓口

土地活用プランナーをはじめとして専門資格を有するスタッフも在籍しておりますので、ご安心ください。


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