基礎知識

賃貸経営する前に必ず理解しておくマーケティングポイント


賃貸経営をする前にマーケティング調査をしっかり行えば、その土地に適した様々な活用プランが提案できます。

アパートやマンションなどの賃貸住宅から、オフィスビル、商業店舗、ロードサイド、社会貢献型施設、定期借地など現地の条件や地域の特性に応じた活用方法が導きだせます。

 

1.住居系建物の建設

(1)空室戸数、空室率の増加

現在、日本全体では空き家戸数が年々増加し、人口減少が始まった中で住宅は過剰状態となっています。

その中で、人口減少が深刻な地方圏と、いまだに人口増加が続いている首都圏など、地域によって住宅事情の格差があります。

急速な高齢化が進む中、高齢者向けの高品質な賃貸住宅や介護施設が整備された社会福祉型の賃貸住宅へのニーズが高まる傾向もあります。

一方で、若者の中には、自分の家を持つよりも賃貸の方が融通がきく、など賃貸派が増加しています。

日本の住宅を取り巻く環境は、一大転換期にさしかかっているといえます。

もう、昔みたいに賃貸住宅さえ建てれば素人でも事業が成功する時代ではありません。

全国の賃貸住宅は、2,281万戸ありますが、そのうち249万戸が空き家で空室率は実に18.8%に達しています。

また、人口集中の続く東京都だけは空室率悪化とは無縁といわれ続けてきましたが、相続税引き上げ対策としての貸家着工が増加したため、空室率が13.8%から16.2%と大幅に悪化しています。

 

(2)賃貸住宅経営でのリスク回避

賃貸住宅経営は、スタート時点の条件設定でその後の収益構造の大部分が決まってしまいます。

どのような種類の建物を、どのような規模と間取りで建てるかを事業開始時に決めてしまえば、自動的にその後の収益も確定します。

その後に、変更できる余地はほとんどありません。

つまり、スタート時点ですべてが決まってしまうので、事業開始時にマーケティング調査をしっかり行い、入居者ニーズをつかんだ計画とする必要があります。

また、バブル期には競って過大な投資に走った結果、ローン返済が重荷となり事業が行き詰まるケースが頻発しました。

これはつまり、マーケティング調査を軽視し、地域のニーズに合っていない土地活用事業を行ってしまった、悪い見本なのです。

賃貸住宅のリスクをおさえるポイントは、①自己資金の比率を増加させる ②投資の適正規模を見極める、の2点に尽きます。

①の自己資金を増加させる具体的な方策は、他に所有している土地や、活用予定地の一部を売却するなどです。

昔は、「借金も財産」といわれ、いかに多くの融資を引き出すかを模索した時代もありました。

もはやそのような時代ではありません。

資金は多ければ多いほど、事業を安定させます。

眠っている資金や資産があるのなら自己資金として積極的に活用するのが得策です。

②の適正規模を見極める具体的な方法は、規模縮小の検討などです。

多額の借金をしてマーケットを超える賃貸住宅を建設しても、空室の増加や賃料の低下を招くだけです。

やがて返済が滞り、競売で処分されるような事態になってはいけません。

地域のニーズに見合った事業規模まで縮小することで、ミドルリスク・ミドルリターン、あるいはローリスク・ローリターンの提案を検討することが重要です。

 

(3)建物規模の選択

①低層建物の建設

ターゲットを絞り、投資額も抑えた低層アパートの建設は、手堅い賃貸住宅経営であり、まさに土地活用の王道といえます。

おおきく分けて、鉄骨階段のついた2階建てのアパートと、タウンハウス(長屋方式)があります。

一般的なイメージは、木造2階建て・羊羹型で、住宅地において戸建て住宅と共存しながら建てられています。

近年はハウスメーカーや工務店が幅広い商品バリエーションを開発しており、おしゃれな外観も増えてきました。

 

木造系のアパートの工法には、「在来工法」と「2×4工法」の2種類があります。

2×4工法の場合は、ハウスメーカーが高品質なアパートを開発しているので、その建物を活用するのが主流です。

軽量鉄骨造系の場合も、工務店の「注文建築方式」のアパートと、ハウスメーカーの「認定工業化製品」のアパートがあります。

低層アパートはおおむねこの4つに分類することができます。

土地活用をするときは、単身向けなのか、ファミリー向けなのか、それともコンセプト型アパートなのかを判断し、上記4つのカテゴリーの中から設計事務所もしくはハウスメーカーに対してコーディネート依頼をしていきます。

特に、軽量鉄骨系の低層アパートは、ハウスメーカーが種々の商品を開発しており、数多くの選択肢の中からどのような商品をチョイスするのかが肝になります。

 

②中高層建物の建設

一般的に、鉄筋コンクリート造などの堅固な建物で、3階建て以上の中高層階の建物をマンションと呼びます。

構造別に、重量鉄骨系の認定工業化製品、プレキャストコンクリートの建物、注文建築のRC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)という建物に分かれます。

それぞれ、ファミリー向け、単身向け、そしてコンセプト型があります。

高層活用の場合は、1階の利用方法について工夫が必要です。

1階にテナントを誘致して、上層階を住宅系にするケースも検討しなければなりません。

建ぺい率・容積率が高い敷地の場合、狭い敷地一杯に高層建物を建設するのが普通です。

このため、エントランスやエレベーターホール、管理事務室という建物の中枢となる部分に、かなりの面積がとられてしまいます。

さらに、駐車場や駐輪場の位置義務があるため、1階のほとんどが共有部分になってしまうことがあります。

このため、店舗のスペースを確保したくてもできない場合もあるので要注意です。

また、テナント系のニーズは、住宅ニーズよりも限られるため、店舗誘致する事業計画の場合、より慎重なテナント誘致計画(リーシング)が必要になります。

住宅系の募集計画と、店舗系の募集計画のバランスをみながら提案していくことになります。

 

(4)立地による選択

駅前や繁華街など、賃料水準が高い地域の場合、容積率を最大限に活用した中高層マンションを建設することが考えられます。

借入金は増大するものの、利益を最大限に追及できます。

好立地の商業地域なら容積率が400~500%、建ぺい率も耐火にすれば100%になることもあるので、容積率・建ぺい率を最大限に活用した賃貸マンションを建設できます。

一方、第一種や第二種低層住宅専用地域では絶対的高さ制限があって、高さは10mか12mに制限されています。

建物の階高を3mとすると、高さ10mの制限では3階建て、高さ12mの制限では4階建てまでしか建てることができません。

さらに、建ぺい率が30%で容積率が60%などという地域では、2階建てのアパートが最適な土地活用、というケースもあります。

土地活用を検討し始めたら、土地の法令上の制限を十分に把握しなければなりません。

 

2.オフィスビルの建設

(1)オフィスビルの需給動向

一般財団法人日本不動産研究所の調べでは、2016(平成28)年1月現在、全国のオフィスビルのストックは、11,116万㎡(8,636棟)となっています。

そのうち、東京都区部が約6,778万㎡(4,889棟)と床面積ベースで61.0%、棟数ベースで56.6%を占めています。

また、最近のオフィスビルの新規着工面積を見ると、2013(平成25)年から2015(平成27)年までの3年間では、全体のほぼ2/3を東京都区部が占めています。

このように、近年ではオフィスビルの東京一極集中傾向がさらに顕著になっています。

東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)のオフィスビルの空室率をみると、2007(平成19)年に2.65%であったのに対し、リーマンショックの影響から、2011(平成23)年は9.01%まで悪化しています。

世界的な金融危機の影響で企業利益が大きく落ち込み、経費削減の観点からオフィスの(平成29)年12月の空室率は3.12%まで改善してきています。

 

東京都心5区のオフィスビルの平均賃料も、2008(平成20)年の坪当たり22,186円/月をピークとして、下降傾向となり、2013(平成25)年には、坪16,207円/月と、26.9%もさがっています。

その後持ち直してきており、2017(平成29)年12が宇の平均賃料は坪19,173円/月まで改善してきています。

このように、オフィスの東京集中の傾向は、今後も続くと予想されているものの、空室率や賃料はその時々の経済状況やオフィスの供給状況によって大きく変化します。

オフィスビルの建設を計画する場合には注意しましょう。

 

(2)オフィスビルのリーシング

オフィスビルのリーシング(テナント募集活動)は、①どのようなテナント に、②どのような事務所(床面積、セキュリティ、設備容量等)、③どのような賃貸条件(賃料、保証金)、④いつ(ビル竣工時期)賃貸するかというのがポイントになります。

いま日本中の企業は、経営改善や生産性の向上に必死で取り組んでいます。

このため、オフィスには賃料の安さ(経営改善)と同時に、高度な通信環境や情報セキュリティに対応した、高品質なオフィス環境(生産性向上)を求める傾向が強まっています。

昔のように最低限の設備仕様さえ整えられればテナントが埋まる時代ではなく、さまざまな要求・条件をもったテナント企業が増えているのです。

このため、ターゲットとの交渉次第ではビルのコンセプトや設備仕様を変更する必要があります。

つまり、ビルの計画当初から、ターゲットへのプレセールスをいち早く開始することがポイントになります。

次の入居者にも喜ばれるような、ある程度の汎用性を保ちつつ、テナントの要望に柔軟に応えていくことが最近のオフィスリーシングのポイントになってきているのです。

 

アパート・マンションの場合、サブリースや家賃保証といったメニューが充実しています。

しかし、商業施設系や事業系はサブリースというメニューはほとんどなく、このため金融機関が空室リスクを考えて融資を認めないケースも多くみられるようです。

もし誘致するテナントが内定していれば金融機関は融資をしやすくなり、オフィスビルの経営も成功に導くことができます。

オフィスビル事業を成功させるには、テナントをいかに早く内定させるかが重要なポイントです。

オフィスビルにする場合、金融機関の融資の判断基準を考慮し、強力なリーシング体制をつくれるかどうかを検討したうえでプラン検討することが重要です。

 

3.商業ビルの建設

(1)商業ビルのコンセプト

インターネット通信販売やTVショッピングの台頭で商業ビルの運営は厳しい状況になっています。

この傾向は今後もますます強まると予測され、商業ビルの建設は十分なマーケット分析が必要です。

そして、キーテナントの出店の目途が立った時点でスタートするのがベストです。

商業ビルのコンセプトを、土地オーナーだけで先行して決めるのは危険です。

そのビルのキーテナントが確定した段階で、サブテナントも集め、ビル全体でどのようなコンセプトにするのかを決めていく方式が望ましいでしょう。

商業ビルにはイベント広場を設けるなど、人が集まる仕掛けが必要です。

そのためには、テナントも一体となって商業ビルを運営するような感覚と価値観が必要です。

 

もし商業ビルの計画地が、全国チェーンのテナント出店予定エリアに入っていたら、リーシングは円滑に進みます。

全国規模の商業施設なら、十分な出店調査を行い、採算性を検討したうえで出店を決めているので、その他のテナントも安心して出店を決めてくれます。

また、全国規模の商業施設ができることで、地域の集客力自体が向上する効果も期待され、テナントの注目度もアップします。

したがって、今後どのような商業施設の計画があるかを探ることは極めて重要です。

商業ビル建設の計画を幅広くキャッチし、リーシングに役立てるようにしましょう。

 

(2)商業ビルの賃料

商業ビルの賃料は、オフィスビルと同じような固定賃料の場合もありますが、多くは店舗の売り上げによって賃料が変動する「歩合賃料」とするのが一般的です。

商業ビルは施設を運営するオーナーと、そこで実際に営業を行うテナントの協力があって初めてお互いが繁栄するため、共同事業的な色彩が強い業態です。

そこで、利益を分け合うという発想から歩合賃料が導入されています。

賃料には、①完全歩合制、②固定賃料+歩合制、③固定賃料中心制の3種類に大きく分けられます。

①完全歩合制

テナントが繁盛すればするほどオーナーの利益も増えるので、成功すれば利益大

もし閑古鳥が鳴いているテナントばかりなら収益は見込めない

好立地かつ人気のテナントを誘致できる場合はおすすめ。

②固定賃料+歩合制

月額賃料を1万円/坪とし、坪当たりの月額売上が30万円をこえたら10%、40万円をこえたら15%、50万円をこえたら20%と、売上の増加に応じて歩合の率が上昇する制度です。

あるいは月額賃料は1万円/坪で、歩合は売上の10%と固定する場合もあります。

③固定賃料中心制

固定賃料の場合はテナントの売上に関係なく一定の賃料を受け取る方式です。

固定賃料でも売り上げの2~3%程度の歩合を賃料に追加して収受することもあります。

歩合賃料制では、オーナー(貸主)が日々の売上を確実に把握しなければならないので、コンピュータ連動のレジスターを導入するのが一般的です。

 

4.その他の土地活用メニュー

(1)アパート・マンション系とその他のメニュー

その他の土地活用メニューとしては、ロードサイド、コアセンター、社会貢献型施設、医療施設等があり、定期借地もしくはリースバック方式という契約形態もあります。

一般的に土地活用方法の選定では、大きく分けるとアパート・マンション系とその他にわかれます。

アパート・マンション系は統計学的なマーケティングができており、そこから導き出される賃料相場が事業収支に反映されます。

このため、比較的制度の高い事業計画を出すことが可能です。

一方、ビル・貸店舗・医療機関・その他リースバック方式等のテナント誘致型の場合、実際のテナント募集活動を並行して行うことによって骨子がかたまるケースが多いものです。

そして、これらの事業を成功へと導くカギは、「先行テナントが決定してから建築工事などに取り組む」ことです。

住居系は「不特定多数」のターゲットが見込めますが、これらの土地活用業は「特定少数」のターゲットです。

したがって、決して見切り発車は許されず、特定のターゲットに対して事前にアプローチし、内定をもらってからスタートするのが鉄則です。

たとえば、ロードサイドの土地活用なら「コンビニエンスストアの入居が内定しているので300坪の土地活用をしたい」と金融機関に打診できます。

具体的に決まっていれば、金融機関からの融資も円滑に進み、テナントが決定しているので計画的な建築が可能で、事業が円滑に進行するのです。

 

(2)テナント誘致先行型の土地活用メニュー

医療機関誘致型や社会貢献型の場合も、運営事業者や医療法人のテナント入居が大前提となります。

店舗系や社会貢献型の場合でも、建物をつくってから入居を募ったのでは、テナント誘致に苦労するのは目に見えています。

これではいきなり失敗の入口に立たされるようなものです。

あらゆる情報を集め、ネットワークを構築し、情報のアンテナを持っていなければありません。

情報のアンテナの取り方としては、店舗系や医療機関系を計画するときは、その方面に強い企業や団体とコラボレーションすることが必要になります。

 

5.土地活用規模決定の留意点

土地活用のプラン

(1)活用の適正規模とは

高度成長期の時代は、土地不足と旺盛なニーズの中で、容積率の完全消化が半ば常識化していました。

容積率が500%なら、500%の容積率を目いっぱい活用する建物を建てるのが当たり前でした。

それでも事業が成功していたのですから幸せな時代です。

しかし、現在では敷地を調査し、マーケティングの結果をもとに「適正規模」を想定するのが基本となっています。

現在では地域性や商圏範囲の影響で、10階建てが建つ地域であっても5階建てを計画することがよくあります。

ロードサイド型で、駐車場をふんだんに確保した方が、地域のニーズに合っているような場合も同様です。

敷地と、建物の適正規模との関係は、時代の変化や地域特性を見極めたうえで判断する必要があります。

適正規模を見極める中では土地の担保力も重要になります。

多くの場合、融資が伴うので金融機関の査定が必要になるからです。

金融機関では、建物に対する融資において建物価格の50%程度を担保力としてみるのが普通です。

土地の融資においては、たとえば路線価の6割くらいが担保評価になります。

したがって、担保評価から逆算すれば融資総額が導き出され、おのずと適正規模が決まってくるというわけです。

もちろん、テナント誘致力の強い地域では担保価値も高く弱い地域では低いという傾向もあります。

 

(2)土地活用規模の判断

投資規模を判断する際は、土地オーナーの生活設計を考える必要もあります。

たとえば1億円の投資をして、投資に対する表面利回りを10%とした場合、その人の生涯にわたる収入はどうなるのか、その他の収入があるかないのか、相続税はどれくらいになるのかといった生活設計上必要な諸経費を考慮します。

実際の土地活用事業では、最終的な手取り利回りが年3~5%になるケースが多いので、1億円の投資なら手取りでざっと月額25~40万円程度になります。

同じ利回りで計算して、その投資額が2億円の規模だとしたら、そのまま2倍になります。

ただし、手取りで2倍になるといっても、経済変動など不確定要素もあります。

オーナーが持っている土地の担保価値や金融資産の余力も検討しなければなりません。

リスクヘッジのための備えを含め、総合的な観点からオーナーは自身の生活設計を考えたうえで、土地活用による収益をどれくらいまで求めていくかを判断します。

 

(3)次世代対策の必要性

土地活用は息の長いものであるため、次の世代も考えた計画でなければなりません。

事業用定期借地権であれば期間が10~50年、アパート経営であれば20~30年、マンション経営であれば30~40年というスパンになります。

当然のことながら、土地オーナーのこどもや孫の生活を支え、後に残る世代から感謝されるような土地活用が望まれます。

 

(4)敷地最大能力の分析、検討

適正規模を導きだすときは、敷地の最大能力の把握から入る方法もあります。

Aという200坪の土地の建ぺい率が60%・容積率が300%の場合、1フロア―100坪で6階建ての建物が最大規模になります。

この場合、エレベーター付きの鉄筋コンクリート6階建てを提案するのか、エレベーターのない3階建てを提案するかを考えます。

最大でも1フロア―100坪の6階建て以上のプランはありえないので、この中でいくつかの基本プランを考えて比較検討していくのです。

また、マーケティングの結果やオーナーの生活設計や資金余力なども勘案して、いくつかの案の中で比較検討して、適正規模を提案していくことになります。

 

まとめ

土地活用を検討するとき、単純に、「初期コストをおさえたいから」とか「なんとなく軽量鉄骨の方がよさそうだから」と、イメージでプランを決めてしまうのではなく、活用検討地にどんな可能性があるのか、ニーズがあるのかきちんと見極めることが重要です。

とはいえ、自分だけで考えると行き詰ってしまうこともあると思います。

お悩みや現状をヒアリングした上で適切なプラン提案を希望する方は、 土地活用の窓口 までご相談ください。

第三者機関として客観的に、そして多角的なご提案をさせていただきます。


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