アパート経営

アパート・マンション経営|段階別で見る3つの事業収支計画書


事業収支計画書は、レベルごとに大きく3種類にわけられます。

レベル1は、一目でわかる単年度の簡易事業収支計画書

レベル2は、30年の事業収支を簡潔に1枚にまとめた計画書

レベル3は、空室率や賃料の改定、修繕計画を取り込み、シュミレーションをした詳細な事業収支計画書

この3つです。

この記事では、具体的にこの3つのレベルの事業収支計画書について解説していきます。

 

1.事業収支計画書の3つのレベル

(1)レベル1:単年度の簡易事業収支計画書

単年度の簡易事業収支計画書では、まず「事業計画」として、土地活用を実施する土地の概要を簡潔に記載します。

ここに記載するものは下記の通りです。

①所在地や最寄り駅、法令上の制限、建築計画

②建築計画や賃貸住戸の戸数、竣工時期

③募集条件としての賃料の単価表

④利回り

「年間収支計画」として、家賃収入から維持管理費などのランニングコストを見込み、返済額を差し引いて、月にいくらの「差引利益」があるかをチェックします。

この段階では所得税などは計算にいれていません。

簡易事業収支計画書では空室率などを見込まないのが一般的です。

利回りには、単純に収入を事業費で割ったもの(表面利回り)と、収入から支出を引いた「差引利益」を事業費で割ったもの(実質利回り)があります。

レベル1の段階での想定賃料は、空室率や経年変化による賃料の下落、経年劣化によるメンテナンス費の増加などを見込んでいないので、手堅く安全な賃料としておくことが大切です。

ここでは、「A氏が所有する駅前土地の賃貸マンション建設」をモデルに事業収支計画書を検討していきます。

事業収支計画書の賃料は月額賃料を1万円/坪としています。

▼▼ A氏の駅前土地の単年度の簡易事業収支計画書(レベル1) ▼▼

所在地 東京都港区東麻布1丁目
最寄り駅 都営地下鉄大江戸線赤羽橋駅徒歩4分
用途地域 商業地域
建ぺい率 80%
容積率 400%
敷地面積 166㎡(50坪)
建築面積 132㎡(39坪)
施工床面積 825㎡(249坪)
延床面積 742㎡(224坪)
容積対象面積 660㎡(199坪)
専有面積 600㎡(181坪)
構造・規模 RC造6階建
戸数 20戸(@25㎡/戸)
1階店舗 100㎡(30坪)
工期 9か月

 

【募集条件】

店舗 20千円/坪(月)
住宅(1K) 10千円/坪(月)

 

【年間収支計画】

事業費 建設工事費 198,000千円
  (延床単価 900千円/坪)
  設計・監理料(5%) 9,900千円
  その他 22,100千円
小計①   230,000千円
借入金   220,000千円
自己資金   10,000千円
収入 住宅賃料 18,000千円
  店舗賃料 7,200千円
小計②   25,200千円
支出 借入金返済 11,140千円
  管理費 990千円
  (住宅収入の5.5%)  
  諸経費 3,300千円
小計③   15,430千円
収支④=②-③   9,770千円
表面利回り=②÷①   10.96%
実質利回り=④÷①   4.25%

 

何枚にもわたる複雑な計算書をみても、全体を理解できる土地オーナーは少なく、かえって混乱してしまうこともあります。

その点、簡易事業収支計画書は、一目で事業の概要と収支計画がわかるので、最初につくる事業収支計画書としては最適です。

建築会社の営業マンも、まずこうした簡易事業収支計画書をつくり、それを土地オーナーにみせ、「賃貸住宅経営をはじめませんか?」とすすめてきます。

簡易事業収支計画書と配置図、立面図を見ながら、土地オーナーは土地活用事業を行うかどうかの、最初の判断材料にするのです。

ところで、建築会社の営業マンの目的は、賃貸用の建物を建設することです。

そのため、できるだけ事業に乗りきになってもらえるようなプレゼン資料を作成します。

数字には大なり小なり手心が加えられている可能性が高いといえます。

したがって、建設会社が提示する簡易事業収支計画書を、鵜呑みにするのは危険です。

あくまでも概算と思うようにしましょう。

事業収支計画の基礎となる総事業費や収入、金利、ランニングコストなどの数字は、実際に事業をはじめてみなければ確定しません。

ある程度幅を持って見込むものとして理解しましょう。

したがって、簡易事業収支計画はあくまで事業の成否の目安を検証するための概算資料となります。

簡易事業収支計画から、さらに踏み込んで具体的な建築費、賃料査定、プラン、金利、空室率等をシミュレーションしたレベル3クラスの長期事業収支計画を検証する必要があります。

土地オーナーが事業を実施するかどうかの決断をする場合にも、レベル1やレベル2の収支計画書をもとに判断することはリスクが高いので、必ずレベル3の長期事業収支計画書を検証する必要があります。

また、簡易事業収支計画書を作成しないで、いきなりレベル3の長期の詳細事業収支計画書からプレゼンテーションを開始する建設会社やハウスメーカーの営業マンもいます。

簡易事業収支計画書を作成してもらう場合、その裏付け資料として、①賃料設定の根拠となるマーケティング資料、②事業費の内訳、③管理費や諸経費の内訳を準備して、土地オーナーの質問に応えられるくらいの方でないといけません。

 

(2)レベル2:長期の簡易事業収支計画書

金融機関に対し、30年間にわたる事業収支計画書を1枚にまとめて低州することがあります。

また、土地オーナーへの説明資料として活用することもあります。

これが、レベル2の長期の簡易事業収支計画書です。

数字の内容は、単年度の簡易事業収支計画書と同じですが、借入金の返済額や金融機関から借り入れている金額の残額の推移がわかります。

事業収支計画書を分析するときには次のようなポイントを押さえなければなりません。

①収入金額

収入は一定となっていて、レベル1と同じ金額です。

空室率や賃料低下のリスクを織り込んだ手堅い賃料設定かを検証する必要があることは、レベル1の単年度の簡易事業収支計画書と同様です。

②借入金返済

返済金額が30年間一定なので、固定金利ということが分かります。

その金利を見ると、年利で3%となっています。

土地オーナーも、金融機関に打診してこの条件で融資が受けられるかどうかを確認する必要があります。

 

▼▼ A氏の駅前土地の長期の簡易事業収支計画書(レベル2) ▼▼

【30年間の事業収支計画書】(単位:千円)

年度 収入金額 借入金返済 うち元金
返済分
金利 管理・
修繕費
手取金額 手取累計 借入残高
1 25,200 11,140 4,591 3% 4,290 9,770 9,770 215,409
2 25,200 11,140 4,734 3% 4,290 9,770 19,540 210,675
3 25,200 11,140 4,878 3% 4,290 9,770 29,310 205,797
4 25,200 11,140 5,023 3% 4,290 9,770 39,080 200,774
5 25,200 11,140 5,178 3% 4,290 9,770 48,850 195,596
6 25,200 11,140 5,337 3% 4,290 9,770 58,620 190,259
7 25,200 11,140 5,497 3% 4,290 9,770 68,390 184,762
8 25,200 11,140 5,665 3% 4,290 9,770 78,160 179,097
9 25,200 11,140 5,837 3% 4,290 9,770 87,930 173,260
10 25,200 11,140 6,015 3% 4,290 9,770 97,700 167,245
11 25,200 11,140 6,198 3% 4,290 9,770 107,470 161,047
12 25,200 11,140 6,388 3% 4,290 9,770 117,240 154,659
13 25,200 11,140 6,581 3% 4,290 9,770 127,010 148,078
14 25,200 11,140 6,781 3% 4,290 9,770 136,780 141,297
15 25,200 11,140 6,986 3% 4,290 9,770 146,550 134,311
16 25,200 11,140 7,200 3% 4,290 9,770 156,320 127,111
17 25,200 11,140 7,419 3% 4,290 9,770 166,090 119,692
18 25,200 11,140 7,644 3% 4,290 9,770 175,860 112,048
19 25,200 11,140 7,876 3% 4,290 9,770 185,630 104,172
20 25,200 11,140 8,116 3% 4,290 9,770 195,400 96,056
21 25,200 11,140 8,364 3% 4,290 9,770 205,170 87,692
22 25,200 11,140 8,617 3% 4,290 9,770 214,940 79,075
23 25,200 11,140 8,879 3% 4,290 9,770 224,710 70,196
24 25,200 11,140 9,149 3% 4,290 9,770 234,480 61,047
25 25,200 11,140 9,431 3% 4,290 9,770 244,250 51,616
26 25,200 11,140 9,715 3% 4,290 9,770 254,020 41,901
27 25,200 11,140 10,010 3% 4,290 9,770 263,790 31,891
28 25,200 11,140 10,314 3% 4,290 9,770 273,560 21,577
29 25,200 11,140 10,629 3% 4,290 9,770 283,330 10,948
30 25,200 11,140 10,951 3% 4,290 9,770 293,100 0
合計 756,000 334,200 220,003   128,700 293,100    

 

③管理・修繕費

管理・修繕費の金額が一定となっており、注意が必要です。

建物は、通常はおおむね5年経過後から修繕費が増加していきます。

また、15年経過を目途に大規模修繕も必要になります。

土地活用を検討する際は、修繕費を年次にあわせて増加させるなどのシュミレーションを行い、この収支計画書の実現性を検証してみる必要があります。

また、管理費や修繕費のないようについても詳細に内訳を検討することが大事です。

 

④手取り金額

収入から返済金と管理・修繕費を控除した、土地オーナーの手元に残る金額です。

将来の空室状況や経費の増加などのリスクを織り込んで検証し、手取り金額がマイナスになるような事態に陥ることがないかを検討してみます。

 

⑤手取累計

手取り金額の計算をしてみます。

レベル2の長期の簡易事業収支計画書をみると、15年目で、手取累計金額が、借入残高を超過しています。

したがって、計画通りに事業が進むなら、15年目に借入金を一括返済することができることになります。

もちろん、これは手取り金額が適正であればという話ですが、④の検証結果によっては大きく変化します。

 

⑥借入残高

30年の収支計画書では、毎年一定額を返済しているので、借入残高は減少していきます。

借入金がいくら残っているのかをにらみながら、一括返済も検討しておきます。

 

(3)レベル3:長期の詳細事業収支計画書

いままで見てきた事業収支計画書はキャッシュフローが中心となっていて、手元にいくらお金が残るのかということでした。

レベル3の長期の詳細事業収支計画書では、キャッシュフローの計算と共に、実際の税務申告と同じような業務収支計算書も作成します。

これは、税務上は記入機関への返済金について元本返済金は経費と認めないとか、現実の金銭支出としては発生しない減価償却費を税法にしたがって計算して経費に算入するという、キャッシュフローとは異なる計算をしなければならないからです。

①支払利息

レベル2の長期の簡易事業収支計画書では、銀行への返済金を計算しましたが、この返済金は①元本返済金と②支払利息に分けることができます。

そして、税務上は、元本返済額は経費とはなりません。

借りたものを返すのだから経費とはならないのです。

一方、②の支払利息は賃貸事業に伴う経費として認められます。

 

②減価償却

賃貸用の建物は年月の経過とともに価値が減少していきます。

減価償却とは、この価値の減少分を計算して、経費として計上することです。

計算方法は、たとえば、マンションの建設費を2億2,000万円とすると、おおむね建設費の70%が建物分になります。

そして、建設費の30%が設備分となります。

鉄筋コンクリート造のマンションの耐用年数は47年と定められているので、償却率は1/47=0.02127…..となります。

国税庁では償却率を0.022と定めています。

また、電気・ガス・給排水施設等の建物附属設備の耐用年数は、15年と決められており、償却率は0.067と定めています。

【賃貸マンションの減価償却】

賃貸マンションの減価償却

 

建設費を7:3の割合で建物と設備に区分して、それぞれに償却率を乗じると毎年の減価償却金額を算出することができます。

この計算方法を定額法といい、一般的に採用されている方法です。

【主な法定耐用年数と償却率(定額法)】

区分 耐用年数 償却率
鉄筋コンクリート造 47年 0.022
鉄骨造 34年 0.030
軽量鉄骨造 27年 0.038
木造 22年 0.046
付帯設備(電気・ガス・給排水等) 15年 0.067
エレベーター 17年 0.059
消火設備 8年 0.125

 

事業費には、初年度経費で落とせるものと落とせないものがあるので、工夫が必要です。

減価償却の基礎となる数字のところでは、建築費や高額な近隣対策費用、立退料、地中埋設物の解体費用等があります。

開業費に分類するものと、償却資産に分類するものがあるので、税理士と綿密に打ち合わせしなければなりません。

 

③長期の詳細事業収支計画書の項目

a.事業収支計画書の収入

事業収支を手堅くシミュレーションするときは、空室率や経年変化による賃料の低下も取り込むことができる事業収支計画書が望ましいといえます。

ここでの収支計算では、住宅部分の空室率は、2年目から10%に設定しました。

また、経年劣化による賃料の下落は、5年目で2%、10年目で5%、20年目以降は10%としました。

店舗部分の賃料は一定としています。

 

b.事業収支計画書の支出

支出の項目のうち、管理費は賃料集金業務を委託するものとし、住宅部分の収入の5.5%を見込んでいます。

 

▼▼ A氏の駅前土地の長期の詳細事業収支計画書(レベル3) ▼▼

【事業収支計画書】(単位:千円)

項目 年度 1 2 3 4 5
収入 賃料収入 18,000 16,200 16,200 16,200 15,876
空室率 0% 10% 10% 10% 10%
賃料の下落率 0% 0% 0% 0% 2%
店舗収入 7,200 7,200 7,200 7,200 7,200
収入合計① 25,200 23,400 23,400 23,400 23,076
支出 管理費 990 891 891 891 873
日常清掃費 432 432 432 432 432
定期清掃費 120 120 120 120 120
植栽メンテナンス 96 96 96 96 96
エレベーター点検費 720 720 720 720 720
自動ドア点検費 72 72 72 72 72
共用部電気水道料 240 240 240 240 240
修繕費 0 0 400 400 600
(工事費割合) 0.00% 0.00% 0.20% 0.20% 0.30%
損害保険料 200 200 200 200 200
土地・固資税・都計税 120 120 120 120 120
建物・固資税・都計税 1,380 1,380 1,380 1,380 1,380
借入返済金 11,140 11,140 11,140 11,140 11,140
必要経費② 15,510 15,411 15,811 15,811 15,993
キャッシュフロー③=①-② 9,690 7,989 7,589 75,899 7,083
不動産所得の経費調整 元本返済金額④ 4,591 4,734 4,878 5,023 5,178
減価償却費(建物)⑤ 3,388 3,388 3,388 3,388 3,388
減価償却費(設備)⑥ 4,422 4,422 4,422 4,422 4,422
開業費⑦ 3,000 3,000 3,000 3,000  
不動産所得⑧=③+④-(⑤+⑥+⑦) 3,471 1,913 1,657 1,802 4,451

 

修繕費は築後2年間はゼロ、3~4年目は建築費の0.2%、5~9年目は建築費の0.3%、10年目以降は同じく0.5%を計上しています。

 

【修繕費の計上】

経過年数 築後2年 3~4年目 5~9年目 10年目以降
対建築費割合 0% 0.20% 0.30% 0.50%
金額 0円 40万円 60万円 100万円

 

大規模修繕日は、15年目に2,000万円を計上しています。

損害保険料は、建設費2億2,000万円の約0.01%として20万円を計上しています。

現在は地価が安定しているので、土地の固定資産税は一定としますが、都道府県では固定資産税評価を3年ごとに見直すので、現実的には増加することもあります。

土地の固定資産税については1/6の軽減措置を適用しています。

建物の固定資産税の軽減措置は、この例の場合、住戸の専有面積が40㎡未満なので適用していません。

支払利息は借入金2億2,000万円、年利3%、固定金利、返済期間30年、元利均等として計上しています。

実際に得た収入から、現実に出費した経費を差し引くと、キャッシュフローの計算ができます。

 

④長期事業収支計画書の税務上の調整

i.キャッシュフローの計算では、金融機関への返済金を全て費用としましたが、税務上は、利息分だけが経費となります。

元利均等の返済の場合は、金利相当部分が毎年減少していくので、税務上の経費としての利息分も減少していきます。

 

ii.マンションの建物の減価償却期間は47年です。

ところが、付帯設備の減価償却は15年で終了するので、16年目からは減価償却費用が減少します。

 

iii.開業費は、登記費用、不動産取得税、上棟式等の費用等を計上し、毎年300万円を4年間にわたり計上しています。

当初の数年間に、開業費を費用に計上すると、損益計算上は不動産収入が赤字になることがあり、この場合は節税効果が生じます。

 

iv.15年や20年先のことを厳密に予想することは困難ですが、事業収支計画書の項目には大きな変化はありません。

現実の収入や支出に合わせて、計画書を修正し、税務署への申告の基礎資料とします。

 

【参考・税務上の収支計算とキャッシュフローの主な違い】

参考・税務上の収支計算とキャッシュフローの主な違い

 

⑤所得税額を計算した事業収支計画書

賃貸住宅経営などをして所得があると、法人の場合は法人税、個人の場合は所得税が課税されます。

個人の場合の課税方法は、不動産所得と給与所得などとを損益通算した金額に課税するので、仮に税務上の不動産所得がマイナスになると、課税所得が減少して節税になります。

所得税は累進税率なので、課税所得が増加すると、税額が累進的に増加します。

この場合、計画的に住宅設備機器の交換・補修をして不動産所得を減額するように検討することができます。

土地オーナーの所得税額を計算するためには、その人のすべての所得を把握しなければなりませんが、土地オーナーとしてもそこまで所得を開示することをためらう場合があります。

所得税などの計算については税理士に依頼することもあり、土地オーナーの税務処理ニーズをよく確認しなければなりません。

また、税務上の指導で収入を得ると税理士法に抵触するので、税務については必ず税理士に依頼しましょう。

 

租税特別措置法の優遇措置は、その制度の仕組みや軽減率、適用条件等が毎年のように改定されるので、税理士に相談して教えてもらうと良いでしょう。

たとえ、概算の計算であっても、税務に関しては計算ミスを回避するために、税理士の検証と監修を受け、確認を得ることが大切です。

 

事業計画書で失敗した事例

埼玉のある土地オーナーは、「建築費は坪60万円でいけますよ!」という建築会社の営業マンが作ってきた事業計画を信じて、賃貸住宅経営を決意しました。

ところが、いざ詳細な建築プランをねっていくと、60万円は本体価格で、外構やガス引込、エアコン代等が別途かかり最終的には坪70万円の建築費用がかかってしまったのです。

当初の事業計画に比べ、建築費用が1割以上コストアップしたということです。

目算が狂ってしまった土地オーナーは建築費以外の事業費を削ろうとしました。

建物を引き立てるための外構費用も、清掃費用などのランニングコストも、最小限の費用しかかけないことにしました。

資金に余裕がないので、建物の魅力を高め付加価値を上げるような、前向きな設計変更は一切取り入れられません。

安さを追求し、必要な費用やサービスを削ってしまった物件には、入居者は集まりにくくなります。

すると、空室が出てあてにしていた家賃収入が入らず、経営は早々に暗礁に乗り上げてしまいました。

そのうえ、とにかく空室を埋めようとするあまり、入居者の審査が甘くなり、入居者の質が低下、ついには家賃滞納まで発生しました。

管理費用を見込む余裕もなかったので、オーナーさんが自分で家賃集金まで行う自主管理にして、「手数料がもったいない」といって滞納保証もつけていませんでした。

このため、家賃滞納がはじまりたちまち収入源に苦しめられることになりました。

オーナーに賃貸管理業務についての知識や経験、そして入居者へのサービスという発想がないと、さまざまなトラブルを引き起こすことになります。

このケースでは、専門知識のない土地オーナーが素人考えで滞納に対応したため、うまく回収することができませんでした。

相談を受けた専門家は、建物の魅力を引き出すためのエントランスと植栽に予算をつけ、管理パートナーも数社と面談してそのうちの1社に管理を委託しました。

新たに紹介した金利の低い金融機関との借り換えが円滑にいったので、土地オーナは追加費用や管理コストを吸収することができました。

 

(4)事業計画で注意すべき税金のポイント

事業計画で注意すべきポイントの一つに、「税金をきちんとみこんでいるかどうか」があります。

所得税、住民税は所得にあわせて課税されます。

さらに、損益とは関係なく課税される固定資産税、都市計画税があり、この他に、一定規模以上の賃貸住宅経営には、個人事業税がかかってきます。

個人事業税は所得税とは別枠で、賃貸住宅経営の場合は、課税所得額の5%です。

【個人の事業税の税額計算】

個人の事業税の税額計算

一般的に、「5棟10室」といわれ、5棟以上の建物を貸している場合、もしくは10世帯以上の部屋を貸している場合、あるいは年間の不動産収入が1,000万円以上ある場合などのいずれかに該当すると対象となります。

 

【不動産貸付業の基準】

不動産貸付業の基準

3室しか貸していなくても、事務所用で1室あたり50万円の家賃ならば、年間の家賃収入が1,000万円以上となり対象になりますし、逆に家賃収入が1,000万円に達しなくても、5棟以上または10室以上を経営している場合にも対象となります。

また、通常の固定資産税とは別に工作物にかかる税金もあります。

塀や屋外灯、自転車置き場の屋根など土地と家屋に付帯する工作物のうち、減価償却費を経費として計上している物は、事業用の資産とみなされ一定の基準で課税されます。

これは地方自治体に支払う税で、東京都であれば都税事務所が課税してきます。

賃貸住宅用に使用している土地は、固定資産税の減免を受けられるのですが、例外として減免から除外されてしまうケースもあります。

よくあるのが、賃貸アパートの前に設けた駐車場です。

道路に面して3~4台分の駐車場があった場合、入居者専用なら減免の対象になりますが、外部の人に月極め駐車場として貸し出してしまうと、その部分が減免の対象から外れて更地扱いとなり、住宅用より税額が5倍程度高くなってしまうのです。

これらの税金は多くの場合、事業計画そのものを狂わすほど手痛い出費ではありませんが、収支計画では考慮しておく必要があります。

 

【参考】復興特別税の導入と消費税の増税

東日本大震災からの復興財源を確保するために「復興特別税」が導入されました。

この税制は、所得税の場合には、2013年から2037年までの25年間、所得税額に2.1%上乗せするというものです。

たとえば、課税所得金額が195万円超から330万円以下の場合、速算表では[課税所得金額×10%-97,500円]という数式で税金を計算できますが、この税率10%が復興特別税により、10.21%(10%×1.021)になります。

※復興特別税で所得税等の税率が上昇

復興特別税で所得税等の税率が上昇

 

(5)青色申告

「事業規模の不動産所得」であれば、青色申告特別控除として所得金額あから最高65万円または10万円の所得控除が認められます。

また、家族事業従事者に係る専業従事者控除や、青色事業専従者給与が不動産所得計算上の必要経費として認められます。

たとえば、不動産貸付の経理記載などを親族が行っており、その家族に合理的な水準の給与を支払っていれば、それが経費として認められるものです。

この、青色申告の特別控除と親族への給与支払いだけで、少なくとも200万円ちかくの不動産所得の節税効果があります。

もっとも「餅は餅屋」「生兵法は大けがのもと」という言葉もあり、税務関係は税理士の指導を仰ぐべきです。

 

2.まとめ

事業収支計画書は、土地活用するなら欠かせないツールです。

土地活用や、事業に詳しくない土地オーナーであればなおさら、【事業収支計画書】などといわれただけで「難しい・・」と感じてしまうかもしれません。

もちろん簡単ではありません。

表面上の理解だけで、きちんと数字をみないと失敗することもあります。

でも、きちんと順を追ってみていけば、土地活用を、より一層事業として具体的にイメージすることができるものでもあります。

アパートを建てたい、マンションを建てたい、土地活用をしたい、ということだけでなく、「実際に土地活用して事業化したら収支はどのようになるのだろうか」と収支面も意識すると、活用の実現、そして活用成功への道が近くなるかもしれません。

まずは自分の土地でどんなことができるか、というところから考えたい方、土地活用を検討されている方は是非 土地活用の窓口 までご相談ください。

 


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