アパート経営

賃貸経営の入居者トラブルとその対処法をプロが解説します


賃貸住宅を経営すると、小さなことから大きなことまで様々なトラブルがおきます。

夫婦ゲンカが派手で周囲の部屋にまで物音が響く、子どもの泣き声や足音がすごい、上階フロアの音が不愉快、ゴミ出しのマナーを守らない、エレベーターの落書き、バルコニーがゴミの山、など。

はじめのうちは、マナーもルールも守っていたのに、徐々に不良入居者へ変貌していく例もあります。

また、女性専用マンションでは、「男性の出入りに対する対応法」やペット飼育不可マンションならば、「ペットを飼育した場合の対処法」などを事前に決め、トラブルに備えることも必要です。

トラブル防止の基本は、良い管理をすること、特に良い賃貸管理会社と出会うことです。

この記事では、入居者トラブルとその防止・対処法についてご紹介していきます。

 

1.トラブル防止は管理がポイント!

トラブル防止は管理がポイント

▼建物オーナーによる自主管理の場合

トラブルへの上手な対処ができず、大きなトラブルに発展するケースがあります。

建物オーナーと入居者の間に入り、手際よく解決する良い賃貸管理会社を紹介することもひとつの手です。

法的処理ではなく、サービス的に問題を解決できる管理会社がベターです。

クレームやトラブルも、その処理が良ければかえって信頼が生まれるということは良くあります。

クレームには即時対応することがトラブルの一番の解決方法です。

クレームで留め、トラブルにまで悪化させないためにスピーディな対応、スピーディな管理が大切です。

それでも残念ながら訴訟問題に発展するケースもまれにあり、その場合は弁護士に依頼します。

建物オーナーは、「賃貸経営にはサービス業的な発想が必要」であることを理解しましょう。

単に建てて貸すのではなく、入居者に喜んでもらう建物を建てて、良い管理をすることが大切なのです。

良い管理とは、顧客満足度の高い、サービス業的な管理をすること、それにより、色々なトラブルが回避できます。

【良い賃貸管理会社のチェックポイント】

入居のしおり作成・24時間クレーム対応等実施しているか
電話対応・窓口対応が丁寧で、話が分かりやすく、明確な解決策を提案しているか
土日、平日は夜8時位まで営業し、顧客や建物オーナーの立場で仕事しているか
「報・連・相」と欠かさない体制がきちんとできているか
誠意や熱心さ、新しい発想、早く問題解決しようという意欲はあるか
空室物件オーナーには週1回現状報告をしてくれるか
入居者が決まらないことを自分のことのように心配し、応援してくれるか
インターネット(物件情報サイト・自社HP)情報誌などを活用しているか
物件の魅力をとらえ、写真・カラーなどを多用した効果の高い募集図面を作成しているか
競合物件などの根拠を示したうえで、賃料、リフォームの必要性をアドバイスしているか

 

2.増えている賃料値下げ交渉

賃貸経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。

東京都内の人気エリアでも、賃料を維持するには、最新設備へのリニューアルが欠かせない状況です。

単身者向けの物件なら、ガスコンロが普通だったのがIHにかえたり、家具付きにしたりしても家賃を値下げせざるをえないというケースが目立ってきました。

さまざまな空室対策を行っても満室にならないという場合は、やはり家賃の値下げしかありません。

賃貸市場で最近、顕著な傾向があります。

それは、入居者側からの賃料値下げ要求です。

最近は必ずといっていいほど、入居の条件として値下げの要望をしてくるようになってきました。

これは10年ほど前には全くなかった現象です。

今は「借り手市場」で入居者側が多くの物件の中から選別する立場です。

同様に礼金・敷金の交渉も厳しくなっています。

東京都内でも今は、普通の物件で礼金1ヶ月、敷金1ヶ月ぐらいが一般的です。

新築物件でも礼金2か月なら条件の良い方といえます。

駅から遠い、コンセプトがないなど、売りとなるポイントのない物件では、礼金ゼロも珍しくありません。

首都圏以外では礼金はないのが普通になってきました。

まさに、少ない需要と多い供給の中で、人気物件と不人気物件とにマーケットが二極化している現象といえます。

 

【賃貸市場の変化】

賃貸市場の変化

かつての賃貸市場では、入居する側が何かしらの妥協をするのが当たり前で、入居者が値切ってくることなんてありませんでした。

オーナー側も、「値下げをいってくるような入居者はいりません。」と突っぱねるのが当然の時代でした。

しかしいまや、賃料や礼金などでオーナーが妥協しなくてはならない時代になっています。

入居者向けの情報誌などでも、「だめもとで必ず価格交渉はした方が良い」と勧めており、中には2つ申し込んで「安くしてくれた方に決めます」というツワモノもいます。仲介会社がそう仕向けている場合もあるようです。

近頃増えてきたサラリーマンオーナーや二代目オーナーは、値下げ要求があった場合の決断が早く、即断で値下げに応じるケースも多いようです。

しかし、昔の感覚を引きずったままのオーナーは値下げに強い抵抗を感じる人がほとんどで、「値下げしたら負けだ」と思っている方さえいます。

仮に連帯保証人もいて、入居審査を問題なく満たしている入居希望者が、「7万3,000円の家賃を3,000円下げてもらえませんか」と言ってきたとします。

月に3,000円値引いたとすると、1年間では3万6,000円。

次の契約更新までの2年間で考えると、7万2,000円の収入源となります。

これはほぼ、1ヶ月分の家賃に相当します。

ここで値下げを断り、次の入居者が見つかるまで2か月、3か月かかったらどうでしょう。

3,000円値下げをしてでもすぐに契約した方が得策だと分かります。

「ここで値下げに応じると、今住んでいる入居者からも値下げを求められるのでは」と心配するオーナーもいます。

そんな場合は、値下げに応じる際に「他の入居者には値下げの話はしない」という一筆を取るといった対処も可能です。

 

3.家賃滞納対策:督促から明渡しまで

賃貸経営で建物オーナーにとって最も深刻なトラブルが賃料の滞納です。

賃料の滞納は契約違反であり、不法行為でもあります。

ところが入居者の住む権利や人権は守られなければならないので、滞納対策には緻密な督促のスケジュール管理と注意が必要です。

(1)滞納理由

家賃の滞納理由には、単に「忘れていた」「旅行で外出していて払えなかった」「急病やケガ」というものから、「(失業などで)お金がない」「払う気がない」「行方不明・音信不通」など深刻なものまでさまざまな理由が考えられます。

単に忘れていた、時間がなかった、というだけなら良いのですが、払う気があってもお金がない場合、払う気がないという入居者の対応には苦戦します。

 

(2)初期の督促の手順

①電話連絡での督促

滞納にも2~3日程度の「うっかり滞納」から1~2週間、さらに2か月、3か月、長期になると1年、2年といろいろです。

それぞれに求められる対処方法が異なるので、集金には緻密な判断力と、気力、それに体力も求められます。

普通、家賃の入金は月末で、銀行振り込みもしくは自動引き落としがほとんどです。

入金の期限を約定日といい、集金管理では約定日の翌日に記帳し、入金の有無を確認するのがデフォルトです。

約定日に入金がなかったら、翌日にも記帳して確認します。

2日連続で記帳しても入金が確認できなければ3日目、あるいは4日目に入居者に電話して、入金の確認を行います。

この程度の遅れは意図的なものとは限らず、何かの行き違いかもしれないので、丁寧な口調で確認します。

「うっかり忘れていた」ということであれば、「入金をお願いします」と催促しますが、それだけではなく「何日の何時までに入金いただけるでしょうか」と必ず期限を確認します。

「何日までには入金します」という回答を得たときは、とりあえずその日まで待って、また記帳して確認します。

電話で確認した期限になってもまだ入金がなければ、これは警告信号です。

また、電話で確認をとることになります。

このときに、「もうちょっと待ってください」といわれたとしても、「わかりました」で終わらせないでください。

必ず、「前回の約束を守れなかったので、今回は絶対に入金できる日を責任もって言ってください。次はありません」と厳守すべき期限を決定します。

「何日までに必ず」といわれたらさらにその日まで待つことになります。

その時には、既に10日から2週間は約定日を過ぎているはずです。

 

②面談申し入れと確約書作成

「何日までは、必ず」と約束して、それでもさらに入金がなかったとしたら、その後の電話はさらに厳しい口調にならざるを得ません。

そうしないとこちらの断固とした意思が伝わらないからです。

このとき、面談の申し入れの段階になってきます。

日を決めて実際に対面し、「何月何日までに入金します」という「確約書」を取り付けます。

この段階で約定日からすでに3週間~1ヶ月ほど遅れているはずです。

 

③督促状の送付(配達証明)

そして、その期限が来てもまだ支払いがなければ、今度は「配達証明」をつけて「督促状」を送ります。

場合によっては、「何月何日までに入金して頂けなければ法的手段に訴えます」「連帯保証人への法的手段もやむを得ず・・・」といった文言になります。

 

④自宅訪問での督促

さらに、配達証明後も誠意のある対応が見られない場合、約定日から1ヶ月が過ぎたら、今度は内容証明郵便で同様の督促状を送るとともに、自宅訪問、更には連帯保証人への連絡もしくは訪問、、、と、体力戦・神経戦になってきます。

何もしないで待っていたら、1ヶ月、2か月が過ぎるのは、あっという間です。

集金管理に無頓着な建物オーナーは、やがて長期滞納に苦しむことになります。

優しいオーナー、上品なオーナーほど長期滞納に苦しめられるケースが多いようです。

「約束を守る」という常識すら守れない、守ろうとしない人々が増加していて、常識的なオーナーが泣き寝入りする構図が増加傾向にあります。

 

(3)支払い意思と支払い方法の確認

①一括払い

「支払う意思はあるが、すぐには払えない」という場合は、期日を決めていつまでに支払うのか確約をとります。

一括であれば、どんなに遅くても当月中の支払を約束し、必要に応じて「支払いの確約書(念書)」をとり署名押印を要求します。

頻繁に入金が遅れるけれど、1ヶ月以上は滞納しない、といったルーズな入居者がいる場合、滞納の慢性化を断ち切らなければなりません。

面談、手紙等で「約定された期日を守る」ことを誓約する書面に署名押印させます。

書面には、「これ以上の信頼関係毀損があれば、賃貸借契約が継続されない」旨を明記しましょう。

 

②分割支払い

「支払う意思はあるが、当月中の一括払いは難しい」という場合は、できれば直接会って、入居者の事情をききます。

まずオーナーから、「今後も住み続けてほしいので、一緒に解決しましょう」と提案します。

そのうえで、毎月の収入はいくらなのか、なぜ滞納にいたったのかなどの事情を踏み込んで聞き出します。

必要であれば分割払いでの返済計画をたてます。

分割の場合、少し余裕があるくらいの無理のない返済計画を建てることがポイントです。

そのかわり、「支払いが遅れたら退去をお願いする」ことをしっかり伝え、そしてその場で必ず署名押印した「確約書」を受け取ります。

 

③支払い意思がない場合

「支払い意思がない」という場合は、悪質な確信犯です。

弁護士などの専門家に早いうちから相談する必要があります。

その際は、さまざまな分野に強い弁護士を数多くパートナーとして選ぶとよいでしょう。

【入居者の対応】

入居者の対応

 

(4)督促状送付から解約に至るまで

①督促状の送付

やっかいなのは入居者と連絡が取れない場合です。

時間帯を変えて何度か電話をしても出ない、部屋を訪ねても不在という時は、入居者に「督促状」を郵送します。

賃貸住宅が自宅近くにある場合、書面を直接入居者の郵便受けにいれることもできます。

 

【督促状の例】

督促状の例

その後、1週間経っても入居者と連絡が取れない場合、連帯保証人に連絡を取ります。

連帯保証人が本人と連絡を取り、いつ支払うかの連絡を受けるのが普通です。

しかし、連帯保証人とも連絡が取れないという場合、事態は深刻です。

 

②解約予告状の送付

督促状を送付しても連絡や賃料の支払いがない場合、再度の督促状と一緒に「賃貸借契約解約予告」を「配達証明付内容証明郵便」で送ります。

相当の猶予を与えて期限を定め、「何日までに入金がなければ、法律に則って退去をお願いします。」と書き添えます。

並行して、電話催促・訪問催促を続けます。

 

③解約明渡通知

滞納が3か月となってしまった場合、「督促及び解約明渡し通知」を配達証明付き内容証明郵便で送ります。

内容は、「賃貸借契約は解除されました・・・〇〇日以内に退去するように・・・」などの文言を盛り込みます。

後に、明渡し裁判となった場合の証明になるように作成します。

また、賃貸借契約書の解約条項を確認し、何か月以上の滞納で解除としているかも見て、その期間を満たしていることも確認します。

 

④合意解約の場合

面談等の交渉で解約が合意に至った場合、「賃貸借契約解除並びに建物明渡しに関する合意書」を書面にします。

きちんと合意して署名押印をしたとしても、滞納者がその通り実行しないケースもあるのでまだ安心はできません。

 

【合意書の内容】

Ⅰ.合意書の内容

(1)解約日の明示

(2)以後入居者に占有権のないことの確認

(3)明渡し期限の明示

(4)滞納家賃残高の確認と支払い期限の明示

(5)原状回復義務及び敷金精算方法の明示

(6)残置物の所有権放棄及び処分の委任、費用負担等の明示

 

Ⅱ.その他の確認事項

(1)入居者移転先住所・連絡先の把握

(2)毀損個所の撮影(入居前の写真も撮っておくと比較できなお良い)

(3)入居者負担分の修繕個所の確認および費用の見積もり

(4)カギの返却及び交換(即時に行うこと)

(5)電気・ガス・水道など公共料金の精算にかかわる諸手続き等

 

(5)明渡し訴訟の流れ

①明渡し訴訟の提起

滞納が3か月を過ぎると、交渉も進展しない場合は、明渡し訴訟をおこし強制執行による明渡し手続きを取る・・・などを検討する段階になります。

しかし、裁判と強制執行には時間と費用がかかります。

裁判は判決まで最低2か月、強制執行の申立てをしてから明渡しまで最低1~2か月は期間がかかるのが普通です。

つまり、滞納発生から少なくとも半年以上時間がかかります。

債権が60万円以下であれば、少額訴訟で即日判決を得ることも可能です。

通常訴訟の場合、弁護士報酬、運搬費、廃棄費で合計数十万円程度の費用がかかる場合があります。

建物オーナーにとっては手痛い出費です。

裁判や強制執行は、あくまで最終的な手段で、なるべく早い時期に話し合いで解決するのが賢明です。

訴訟で明渡しを求める時は、貸主であるオーナーが「相当な期間、督促を続けたかどうか」が問われます。

少なくとも2~3回は内容証明郵便で督促していない限り、十分な期間とは認められない場合があります。

【訴訟までの流れ】

訴訟までの流れ

裁判では、家賃未払いを理由とした「明渡し」と「未払い家賃の請求」を同時に求めることになります。

 

②和解による解決

実際の裁判では、裁判官が双方の言い分を聞いたうえで、オーナーの言い分がもっともで、明渡しを命じる判決が妥当と判断した場合は、その考えを入居者に伝え、まずは和解をすすめます。

万が一、和解に至らずに判決となれば「借りている部屋を明渡し、滞納している家賃を全額一括して支払え」という内容になります。

一方、和解の場合、裁判官は「部屋の明け渡しは和解から3か月猶予してもらい、滞納している家賃の支払いも、分割で払うことを認めてもらうよう、家主を説得します」と説く場合があるので、通常入居者も和解に応じることになります。

和解が成立した場合は、和解の内容が和解調書に記載されます。

裁判上の和解の場合、調書の内容は確定判決と同じ効力を有する、という民事訴訟法の定めがあり、これに基づいて強制執行が行われることもあります。

明渡しの和解調書には2つの種類があります。

1つは、「明渡しをする」とだけ記載されるケースです。

もう1つは、認諾(被告が原告の請求を認めて争わない旨陳述すること)がつけられ、「もし何年何月何日までに入金しない場合は、強制執行を認めます」という内容の調書が作成されるケースです。

あとの方が、入居者にとっては厳しい内容です。

未払い家賃に関しても、入居者に対して支払い義務が課されます。

しかし、いくら調書にそのような内容が記載されても、ないところからお金は取れません。

実際に支払義務が認められても結局は家賃を回収できないケースも多いのです。

裁判に勝っても本当の目的である家賃回収ができないことも覚悟しなければなりません。

 

(6)督促にあたり避けるべき行動

賃貸住宅の家賃督促について、一部の家賃保証会社等の悪質な取り立て行為(鍵の交換、居室内の動産等の搬出、深夜早朝に及ぶ取立て等)が社会問題になりました。

裁判においても、そのような取り立ては不法行為に当たると判決されています。

以下のような督促方法は、社会的に見て合理性や相当性を欠いていると判断され、損害賠償や不法行為の対象となることがあるので慎むべきです。

 

①滞納の事実、督促の「はり紙」等

家賃等の滞納は、賃貸借契約上の問題で、貸主対借主の個人間の問題です。

それを第三者の目に触れるような形で公表することには問題があります。

 

②深夜の電話・訪問

借主に家賃滞納があっても、深夜に督促の電話や訪問をすることは、相当特別な理由がない限り、社会的に見て合理性や相当性を欠いているとみられます。

 

③勤務先等への電話や訪問

借主にどうしても連絡がつかないとか、借主が了承している場合をのぞいて、職場などへの電話や訪問は社会的にみて合理性や相当性を欠いているとみられます。

④退去要請を無視した強引な訪問

督促のために借主の部屋を訪問した場合、借主から退去するよう要請されても、立ち去らないという行為は、合理性や相当性を欠いているとみられます。

 

⑤無関係な親族などへの滞納賃料請求

借主が滞納している賃料を支払う義務があるのは本人と連帯保証人です。

両親や兄弟などの親族などに対して請求するのは合理性や相当性を欠いているとみられます。

 

⑥無断でのカギ交換、ドアロック

家賃を支払わないといって、鍵の交換等を行うことは、自力救済の禁止にあたります。

また、その必要性・相当性等も認められないので、不法行為に該当します。

契約書中に、あらかじめドアロックを認める条件があっても、消費者の利益を一方的に害する条項として消費者契約法で無効と判断される可能性があります。

 

⑦無断での家具搬出・処分

借主が了承していないにもかかわらず、契約が終了したからといって部屋に残っている家具などを勝手に搬出して処分することはできません。

所有権の侵害や自力救済の禁止に該当し、不法行為となります。

 

家と裁判

4.更新料の請求について

(1)更新料問題

「更新料」とは、1年あるいは2年などの賃貸借契約の期間が満了し、契約を更新する際に、貸主(建物オーナー)と借主(入居者)との間で授受される金銭をいいます。

「敷金」とちがって、返還が前提になっていません。

更新料が必要でない賃貸物件も多数あることから、この更新料に関する契約条項の有効性が問題視されていました。

この問題は、京都地方裁判所からはじまり、さらに2009年から2010年にかけて、大阪高等裁判所で更新料条項の有効性を争った3件の判決が出ました。

そのうち、2件が更新料条項は無効、1件が有効と判示したため、社会的にも大きな注目を集めました。

 

(2)最高裁判決と消費者契約法

そして、これら3件の事件はいずれも上告され、最高裁判所で争われました。

そして2011年7月15日に、3件ともに「更新料条項は原則として有効である」という判決が出されました。

この最高裁判決で更新料問題は一応の解決を見ました。

更新料問題が、裁判に発展した背景には、2001年に施工された「消費者契約法」の存在があります。

この法律は、事業者が消費者との間で契約を結んでも、不当な力関係や情報格差から消費者に不利だと裁判所が判断すれば、契約が無効もしくは取り消されてしまうという規定になっています。

 

世の中全体に消費者保護の流れが強くなり、これまでの当たり前のものであった更新料についても、「違法であり、認められない」とする判決が地裁・高裁レベルで出てきたのです。

建物オーナーは「事業者」、入居者は保護されるべき「消費者」とみなされ、消費者契約法を根拠に「更新料や礼金は不当で無効だ」と訴えられるケースが続々と出てきました。

このような流れを受け、先の最高裁判決に至ったわけです。

この判決では、更新料や「賃料の補充や前払い、賃貸借契約を継続するための対価など、複合的な性質を持つ」と判断されました。

また、一定の地域で更新料支払いは広く知られており、オーナーと入居者との間に消費者契約法第10条にいう情報の量・質・交渉力について格差があるとみることはできない、更新料の額が賃料、更新期間などに照らして高額すぎるなどの特段の事情がない限り、消費者の利益を一方的に害するものには当たらないと結論付けました。

【更新料に対する最高裁判所の判断】

更新料に対する最高裁判所の判断

空室率が上昇し、入居者の獲得競争が激しくなっている賃貸住宅市場では、すでにオーナーは今までのように収受することが難しくなってきています。

今後は、更新料制度をわかりやすくする工夫とともに、礼金・共益費なども含めた諸費用についての説明義務を求められる可能性が高くなってくるといえます。

なお、関西圏で更新料の訴訟が多いのは、首都圏の更新料は1ヶ月程度が一般的なのに対し、関西圏の更新料が比較的高額なのも原因のひとつです。

 

5.原状回復工事費用と敷金返還

(1)退去時の原状回復工事費負担

次は、敷金についてみていきましょう。

敷金は、入居者の退去時における原状回復費用に使われることが多いのですが、近年、原状回復の費用負担をめぐるトラブルが増えています。

このため、国土交通省が原状回復のガイドラインを公表しました。

東京都においては、東京ルールというガイドラインができて、トラブルは減少傾向にあります。

しかしここにきて、入居者側の意識が高まる一方で、オーナー側の意識改革が進まず、トラブル増加が懸念されています。

 

(2)国土交通省のガイドラインについて

国土交通省では、現状回復をめぐるトラブル解決のために、1998年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発表し、2004年にはその「改訂版」2011年には「再改定版」を発表しています。

このガイドラインで、退去時の賃貸人・賃借人それぞれの費用負担の区分を明確化しています。

まず、原状回復の定義は、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失・善管注意義務違反、その他通常の使用をこえるような使用による損耗・毀損を復旧すること」としています。

この定義に従うと、建物オーナーと入居者が負担する原状回復費用は、一般的に次のようになります。

 

【それぞれの立場から見た負担すべき原状回復費用の定義】

それぞれの立場から見た負担すべき原状回復費用の定義

賃貸住宅の価値に関しては、次のような分け方を図示してみます。

【賃貸住宅の価値(建物価値)】

賃貸住宅の価値(建物価値)

A 賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
B 賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの
(明らかに通常の使用等による結果とはいえないもの)
A+B 基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、
損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
A+G 基本的にはAであるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの

国土交通省のガイドラインではこのうち、BおよびA(+B)については賃借人に原状回復義務があるとしていますが、実際のケースは千差万別です。

主観と主観、言い分と言い分がぶつかりあい、トラブルの発生は絶えません。

そもそも、こうした原状回復トラブルが起こらないようにするには、次の対策が考えられます。

【原状回復でトラブルを避ける対策】

原状回復でトラブルを避ける対策

入居者がどんな暮らし方をするのか、事前に予想するのは難しいものです。

入居申込書をみるとおおよその判断がつく場合もあります。

乱暴な「なぐり書き」や「後半になるほど字が荒くなり、空欄が増えていく」という場合は要注意といえます。

また、「きれいな環境はそれに合わせたきれいな生活を促しやすい」ということも言えます。

たとえば、治安の悪化に悩む街で、「街の落書きを消すことからはじめよう!」と美化推進運動がおこることがあります。

クリーンな環境をつくり、小さな犯罪も許さないという住民の姿勢を示し、悪いことがしにくい意識に仕向ける作戦です。

賃貸住宅でも、これと同じことが言えます。

建物各共用部分、ゴミ置き場の周辺、郵便受けや掲示板周辺の環境をいつもきれいに管理していれば、入居者は「迷惑はかけられない」と思います。

残念ながら、原状回復・敷金返還トラブルが裁判に持ち込まれた場合、賃貸人(建物オーナー)が勝てる確率は低くなります。

したがって、できる限り裁判にならないよう、普段からきちんとした対策と、話し合いを続ける姿勢が必要です。

 

(3)東京都の紛争防止条例について

2004年、東京都は「賃貸住宅紛争防止条例」を施工し、宅地建物取引業者(仲介会社等)が原状回復などに関する原則を、契約前に借主に書面で説明することを義務付けました。

この条例は一般に、「東京ルール」と呼ばれています。

この「東京ルール」の対象は東京都内にある居住用の賃貸住宅です。

そのため、たとえ神奈川県の仲介会社でも都内の賃貸住宅を仲介(媒介)する場合は、「東京ルール」にしたがって説明しなければなりません。

原状回復の義務については、人によって意識に大きな差があります。

後で業者がクリーニングに入るということがわかっていても、出るときはきれいに掃除していく人もいれば、部屋を返した後できれいにするのは貸す側の仕事、という感覚のひともいるのです。

比較的、年配の方には前者のような方が多く、若い世代には後者のような方が多いといわれています。

賃貸経営や原状回復工事でも、こうした借り手世代との感覚の違いをあらかじめ織り込んでおく必要があります。

建物オーナーと入居者の感覚に違いがあることを理解していないと、双方にストレスがたまるだけです。

入居者の視点で物事を考え、入居者のニーズをしっかりととらえることが賃貸経営を成功させる基本です。

「東京ルール」での退去時の説明の内容はおおむね次の通りです。

 

【東京ルール説明書の例(抜粋)】

退去時における住宅の損耗等の復旧について:

1.費用負担の一般原則について

(1)経年変化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については、賃貸人の費用負担で行い、賃借人はその費用を負担しないとされています。

(例)壁に貼ったポスターや絵画の跡、日照などの自然現象によるクロスの変色、テレビ・冷蔵庫等の背面の電気焼け

(2)賃借人の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など賃借人の責めに帰すべき事由による住宅の損耗等があれば、賃借人は、その復旧費用を負担とするとされています。

(例)飼育ペットによる柱等の傷、引っ越し作業で生じたひっかき傷、エアコンなどからの水漏れし、その後放置したために生じた壁・床の腐食

 

2.例外としての特約について

賃貸人と賃借人は、両者の合意により、退去時における住宅の損耗等の復旧について、上記1の一般原則とは異なる特約を定めることができます。

特約の例

賃借人は、本物件の引き渡し時に退去の際の室内クリーニング費用として〇万円を賃貸人に支払うものとします。

≪参考≫特約が有効になる要件

①特約の必要性に加え暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること。

②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること(契約書に特約として明記)

③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること(契約書に署名押印)

 

(4)少額訴訟による敷金返還請求

「敷金の返還についてもめている」場合に、入居者が簡易裁判所で「少額訴訟」を提訴することがあります。

少額訴訟は、その額に見合った少ない費用と時間で紛争の解決を図ります。

原則としてその日のうちに審理を終え、判決が出ます。

建物オーナーは、概要だけでもいいので、少額訴訟について理解しておくことをお勧めします。

【少額訴訟制度の概要】

少額訴訟制度の概要

少額訴訟の提起にかかる主な費用は、裁判所へ納める申立て手数料と、郵券代です。

申立て手数料は、訴額に応じて異なり、以下の通りです。

訴額 ~10万 ~20万 ~30万 ~40万 ~50万 ~60万
手数料 1000円 2000円 3000円 4000円 5000円 6000円

郵券とは切手のことです。

訴状の送達や、判決の送付などに使用されます。

この郵券代は、だいたい3,000~5,000円程度です。

これらの申立て費用や郵券代等の訴訟費用は、原則として敗訴者が負担します。

したがって訴え提起の時点では、原告が立替える形になります。

 

まとめ

賃貸経営をすると、色々なトラブルが発生します。

今回は、入居者トラブルの中でも≪滞納≫という家賃収入、賃貸経営に深くかかわることについて紹介しました。

建物オーナーが知識をつけるのはもちろん、良い賃貸管理会社をみつけ、賃貸管理を委託するのもとても良い方法です。

まずは、建物を建てるところから、という方も多いかと思います。

自分の土地にどんな活用プランがあうのか、どんな会社が良い会社なのか、第三者目線でしっかりサポートいたします。

土地活用の窓口 までご相談ください。


コメントを残す

*

相談無料。このボタンからお電話であなたのお悩みをご相談ください。