目次
マンションなどの建設について近隣から大歓迎されるケースは多くありません。
大抵はネガティブな意見がでてきます。
何が建つのか、どれくらいの階数(高さ)なのか、自分の敷地や財産、生活にどんな影響を与えるかなど近隣住民から質問が上がります。
1.土地活用計画中に近隣住民からあがる不安の声
まずはよく上げられるネガティブ意見をみていきましょう
(1)建設内容への不安
一般的に新築で建築をする際、近隣住民がする反発は3通りあります。
①高い建物が建って日当たりが悪くなったり、プライバシーが守られないのではないかという不安
②工事期間中の騒音、工事車両の安全対策、振動等がうるさくはないか不安
③新しく建てる建物がどんな風につかわれて、どんな人が入居するのかが不安
新しく建物を建てるということは、変化を経て地域が活性化することにはつながりますが、反面、近隣住民に様々な面で影響を及ぼすということです。
一切迷惑をかけないことはほぼ不可能なので、「ご迷惑をおかけしますがご了承ください」というスタンスで臨むようにしましょう。
(2)高層の建物への不安
賃貸物件の建設でも、1~2階建てであれば比較的影響は少ないですが、それですら反対の声があがります。
それが3階建て、4階建て、5階建てなどとなると一層反対の声は増してきますので、覚悟しましょう。
誰でも自分が快適に暮らしている家のすぐそばに高層の建物が建てば日当たりのことが気になります。
ベランダが向かい合うような設計になればなおさらです。
見晴らしの良かった庭の眺めが建物によって遮られれば気持ちも沈んでしまいます。
このように、近隣に高層の建物が建つ計画があると、どんな建物なのか大きく関心が寄せられます。
そして閑静な環境を破壊するような建設計画であれば、多くの住民は計画変更を求め個別および団体で建築主に交渉を依頼します。
最近、特に増加傾向にあるのが【プライバシー問題】です。
具体的には、先述した通り窓の位置問題です。
新しい建物の窓、換気口、室外機などがどの向きになるかを気にする人がとても多いのです。
正直窓の位置は早い者勝ち、になっているのが現状でそれを不満に思う方もいるかもしれませんが、実は民法でも厳しくは定められていないのです。
民法第235条の規定により、「敷地境界より1m未満に窓がある場合、目隠しを付けなければならない。」と、これだけです。
法的には問題なくても、近隣住民の意思を一切尊重せずに建築計画を進めてしまうとあとで大事になりかねません。
多くの設計士はその点に配慮して設計しますが、中には何にも気にせずに設計する設計士もいます。
住民に対し最初に説明する設計プランが周辺住民への配慮が全くないような建築士・建築会社はあまりお勧めできません。
【建築計画で問題視されやすいポイント】
▼高層建物の場合
・日照の阻害
・採光の阻害
・景観、展望の阻害
・通風(強風)の阻害
・電波障害
・交通障害(住人の出入りの増加)
▼工事によるもの
・騒音や震動
・塵やほこりの飛散
・建物の損傷、地盤沈下
・交通障害(工事用車両の出入り、重機の出入り)
・大気汚染
・悪臭(アスファルト防水工事などによる)
あくまでも一例で、受け取り方はそれぞれなので他にも考えられることがあるかもしれません。
(3)建築工事への不安
建築工事に対する不安で最も大きいのは、【工事中の震動や騒音、安全対策】です。
鉄筋コンクリート造のマンション建築工事においては、騒音や振動は避けられません。
工事用車両の出入りの際も他の車の出入りがしにくくなったりするので迷惑をかけてしまいます。
最初の解体工事で騒音や振動、塵やホコリが飛んできたりと被害を受けた人は、「本体工事なんてまっぴらごめんだ!」と途中からさらに反対ムードが加速しかねません。
騒音や粉塵飛散は避けられませんが、事前に声をかけておくことで多少なりとも反対する気持ちが緩和できるでしょう。
(4)様々な建物に対する不安
▼高齢者施設・福祉施設の場合
入居する高齢者、および障がい者はどんな人なのか心配します。
たとえば認知症の方がいるなら「徘徊」の心配がありますし、障がい者の方々が入るのならば「どう接するのか」「ちょっとしたことでトラブルにならないか」などを心配します。
一般の方が済む賃貸マンションに比べ不安や迷惑に感じる住民は多くなります。
▼ワンルームマンションの場合
「若い人が増えてうるさくなったりルールを守らないのではないか」という心配があります。
▼ペット共生型マンションの場合
「ペットの無駄吠え」や「噛みつき」「散歩中の糞尿の処理」「動物臭」などを不安に感じる人がいます。
ペットを愛好する人には全く気にならなくても近隣住民には大きなストレスになり、実際にトラブルに発展することも起きています。
▼外国人向けマンションの場合
外国人の場合、文化や風習が異なります。
「町内ルールや日本人としての生活マナーを理解できないのでは」と心配します。
日本の地域社会はまだまだ閉鎖的で、異文化交流に慣れていません。
ちょっとした行き違いが摩擦を起こし、「おおきな地域問題になるのでは?」と心配する人が出てきます。
▼スーパーマーケットやコンビニ等の店舗の場合
地域の買い物環境が活性化し歓迎されることが多いです。
その反面、若者がコンビニ前にたむろするのでは?という声や、商店街の個人経営の店がさびれてしまうのでは?と心配される場合もあります。
ネガティブな意見を探せばきりがありませんが、大きな反対運動に発展しないよう早め早めに課題点をあげて対策をうっておくことが成功への近道なのです。
2.近隣住民への基本対策
(1)近隣住民の理解を得る努力をすること
高層アパートやマンションを建てるとなると、日照や展望問題はほぼ確実にでてきます。
高齢者施設などの社会貢献型住宅や、ペット共生型などの場合でも、入居者の否定的な先入観から思わぬ反対や要求を突き付けられることもあります。
どんなに地域に貢献する建物で活性化の可能性があっても、うまく説明しないと受け入れていないことがあります。
近隣の人からすれば、漠然な不安や妬み、やっかみ等が払しょくできないことがあるのです。
もちろん、法令を遵守していれば反対を受けても建物を建てることはできます。
しかし、現実に反対を押し切って計画を進めようとして、途中で余計な出費や時間がかかって思い通りにいかなくなった事例もあります。
特に、階数や面積の削減、設計変更で建物の規模自体が小さくなってしまうと、完成後の賃料収益も大幅削減されることになり、事業計画が成り立たなくことも。
一度断念して違う計画にしても、同じ土地であれば同じように反対運動が起こる可能性が高いので、一番はじめにオーナーと近隣住民で理解しあうことがとても重要です。
近隣対策としては、まずは、「反対があるかもしれない」前提で、さまざまな住民の想いを考慮し、可能な限りの対策を設計士と打ち合わせることです。
次に、建築法規をきちんと守り、窓の位置やその他、近隣への配慮がかんじられる設計プランを作成してもらうこと。
建築会社選びの際に、近隣住民対策にどんなことをおこなっているかをヒアリングすることも大切です。
賃貸住宅経営では、近隣住民と末永く付き合うことになりますが、それは土地オーナーだけでなく、管理会社や運営事業者にとっても同じです。
事業に参画する人全員が一致団結し、近隣の理解を得るために最大限の努力をし、誠意を見せると良いでしょう。
(2)近隣住民へ配慮をすること
近隣住民から「建物の高さを低くするように」「目隠しを付けて室外機の場所を変えるように」などといった設計変更にかかわる要望がでてきた際、どの程度受け入れるべきか真剣に考えなければなりません。
実際、全ての要望を聞いていたら施工計画におおきな障害が出ることもあります。
とはいえ、良識の範囲内である程度受け入れ、折り合いをつけることも大事です。
そのために、建築工事の予算内に、【近隣対策費】という名目で予備費を計上しておきます。
これは、近隣からの要望に応じ、部分的な目隠しの設置や、軽めの追加工事を組むための予算です。
中には、迷惑をこうむる分、誠意を示すように、と「金銭」を要求されるケースもあります。
過去には、それですむなら、とお金で解決してしまうような風潮もありましたが、一度金銭で解決すると延々と要求されがちになってしまいます。
原則、土地活用をする際には、金銭による解決を目指さない方が良いでしょう。
健全な賃貸経営をするのであれば、そうした人がかかわってきた場合も毅然とした態度で臨むのがオススメです。
一度つけいる隙を見せてしまうと、ズルズルと関わりを切れなく恐れがあります。
紳士的な態度できっぱりと断りましょう。
(3)日頃からの関係が最大の対策になること
土地オーナーと近隣住民の日頃からの関係も大切です。
ご近所付き合いをちゃんとしているオーナーならば、近隣からの反対運動は比較的起きにくいものです。
逆に、日ごろからのご近所づきあいで問題があるオーナーの場合は、反発や嫌がらせを受けることもあります。
そのような場合は、あらかじめ近隣住民の人物像(性格など)をつかんでおくのがポイントです。
そして要注意人物がいたら建築会社に事前に伝えておきましょう。
建築会社は多くの現場経験があり、そうした嫌がらせをするような人物の対応にも慣れています。
手慣れた現場長であれば、事前挨拶、工事内容の説明、工事中も毎日近隣の家の前まで清掃するなど気配りしてくれます。
自宅を土地活用する場合、工事の間に土地オーナーは別の場所に仮住まいとなりますがこうした配慮のある現場長に仕切ってもらえた場合は、竣工後に戻っても近所からこころよく迎えてもらえます。
逆に配慮の足りない現場長だった場合、近隣感情が悪化している場合もあります。
近隣感情が悪くなると賃貸住宅経営をはじめた後にも影響するので、近隣対策を軽視しないようにしましょう。
(4)近隣住戸の家屋調査をしておくこと
まれに、建築工事との因果関係があいまいなクレームが発生することがあります。
例えば「建築工事や解体工事のせいでうちの壁に亀裂がはいった!」だとか「浴室のタイルにひびが入った!」だとか「屋根の瓦がずれた!」などがあります。
こういった曖昧なクレームを回避するためには、近隣住戸の壁や屋根、あるいは室内の写真を撮影するなど、家屋調査を実施する方法もあります。
特に大掛かりな振動が予測される工事の場合は積極的に行うべきです。
工事に伴う責任を果たす意思を示せば、近隣住民の理解を得られます。
また、最初から日々が入っていたのに工事のせいだといわれたらそれを否定する証拠にもなります。
老朽化した住宅が点在する地域や、住民活動が激しい地域、そして大掛かりな建築工事や地中を大きく削る工事などの場合は、家屋調査をするのがオススメです。
※絶対しなければいけないわけではありません。
無理強いして関係が悪化することのないよう、必要に応じて近隣の方に相談してみてください。
そして注意点としてもうひとつ、家屋調査は土地オーナーの予算で行います。
建設会社からの見積書上、「近隣対策費および調査費は別途」と記載されることがほとんどです。
見積もりの依頼前に家屋調査予算等を組み込んでもらいましょう。
(5)建築計画を立て始める前に現況測量をしっかり行っておくこと
建築確認申請の際には、境界確定の同意書の添付は必要ありません。
現地測量さえきちんとしていれば、境界を接する近隣敷地の所有者の同意がなくとも建築は可能です。
測量は大きく分けて、【現況測量】【民民査定測量】【官民査定測量】の3種類になります。
【現況測量】
建築確認を取るために、敷地の大きさや形を調べる測量です。
建築の際、法的に必要な測量はこれのみで、土地の大きさや形状により変わりますが越境トラブル等なければ50坪程度の戸秀15~20万円の費用です。
【民民査定測量】
境界を接する近隣敷地の所有者に立ち会いを求め、境界を確定するための測量です。
費用は土地の大きさ、形状以外に確定しようとしている敷地に接している敷地の地権者数により変わりますが、40~60万円程度です。
立会人数が増えるほど、測量士の手間がかかるので高くなります。
【官民査定測量】
敷地と道路の境界を確認し、道路の幅員を確定します。
道路を隔てて向かい合った敷地の地権者にも立ち会いを依頼することになるので50~80万円程度かかるケースがあります。
一般的な建築の際には、官民査定測量の義務はありませんが、隣家との敷地境界について立ち会いの上で確定する必要が出てくることはあります。
近隣の反対が敷地境界トラブルに派生することもあります。
測量は、建築計画が動き出したときや敷地を売却するときなど何らかのきっかけをもって実施されます。
ところが、実際に建築工事を始める直前で測量を行ってしまうと、建築する側は不利な立場におかれることがあります。
境界について隣人の理解を得られなければ工事を進められないからです。
このような事態を避けるために、建築が決まってから境界確定するのではなく、建築計画など立て始める前にきちんと測量し、境界を確定しておくべきです。
測量を行う目的は近隣対策だけではありません。
土地に関しては基本的に「いつか何かのトラブルがあるかも」と考えておくべきです。
きちんと境界を確定しておくことが土地オーナー自身の財産の保全にもつながります。
3.近隣住民への説明の進め方
(1)近隣説明の手順とは
地方自治体によって、一般的には建築確認申請の1ヶ月ほど前に、「建築計画のお知らせ」という告知用の看板を建設予定地に設置します。
告知な愛用は建築の規模、用途、それにくわえ現在の敷地の状況などです。
この告知用の看板を立てたときに、最初の近隣回りを行います。
近隣へのあいさつの際、あいさつ回りに慣れている建築会社の営業マンと事前に打ち合わせをしておくと良いでしょう。
近隣住民から反対や反発が出てくるのは、建築計画が決まって最初に近隣あいさつに回る時、その次が建物の設計について説明するときが最も多い傾向があります。
土地オーナーは、あいさつ回りの際に、「配慮すべき近隣住民のリスト」をつくって地図上に示し、建築会社に注意しておきます。
【現地調査をして近隣説明のポイントを把握する】
近隣対策 | 日影の影響が出る近隣建物の窓・バルコニーの位置(設計事務所作成) |
近隣建物の構造・階数・築年数の目安 | |
町内会組織・役員・商店会の組織・役員 | |
付近の近隣住民との建築紛争の事例の有無 | |
安全対策 | 前面道路が小・中学校の通学路になっていないか |
近隣に幼稚園、保育園、病院、老人ホーム、図書館等があるか | |
震動対策 | 近隣に精密作業をしている工場等がないか |
騒音対策 | 近隣に電話による業務が多い事務所がないか |
工事対策 | 道路の規制状況(建築用重機が搬入できるか) |
近隣に対してどこまで設計の内容を説明する義務があるかは、自治体によって異なります。
自治体によって、一定規模以上の建物を建てる場合には説明会の開催が義務付けられている場合もあります。
一番簡単なところで、窓の位置、建物規模の説明を個別に行うだけで良いパターンです。
ただし、プライバシー保護の面もあるので、部屋の間取りまでは説明しなくてもよいです。
こうした点について、自治体ごとにガイドラインをつくったり、近隣対策についての行政指導を行ったりしています。
近隣説明の前にはその地域で定められている近隣対策の規定を確認しましょう。
近隣対策を建設会社にまかせきりにしてあいさつ回りにもただついていくだけではいけません。
どこまでの図面を示すのか、あいさつ文書の文言はどのような内容にするのかなど把握しておきましょう。
▼あいさつ回りで用意するもの
・施工計画地の地図
・施工方針
・安全対策、騒音対策
・施工計画書と図面
(2)建築紛争予防条例等とは
①建築紛争予防条例等の情報入手
賃貸マンション・アパートの建築工事にともなって発生する近隣紛争の防止のために、地方自治体の街づくり課などが主となり、「建築紛争予防条例・指導要綱」といったものが定められていることが多いです。
自治体によって、条例等の内容は変わるので、自治体の窓口を訪ね、条例や申請書類、提出書類を手に入れて規制内容をしっかり理解する必要があります。
条例等には、近隣者の範囲(定義)建築の標識(おしらせ看板)の設置期間、説明会の開催、説明事項、説明会の結果報告、紛争が生じた場合の調停・あっせんの手続き等が行われています。
【建築紛争予防条例の主な内容】
・近隣者の範囲(通常は建物の高さの2倍の範囲内)
・建物の標識
・説明会の開催、説明事項(個別説明だけで可の場合あり)
・自治体への説明会の結果報告
・紛争が生じた場合の調停・あっせんの手続き
②建築基準法と住民説明
建築基準法は、その建築物の構造体力上、防火・避難上、衛生上等の観点より安全性等を確保するために基準を定めたものです。
そしてこの基準は近隣住民が反対すれば厳しくするというようなものではなく、反対運動に影響されずに確認済証を取得することができます。
一方、建築紛争予防条例は、建築主(土地オーナー)と近隣住民との話し合いのルールを定めたもので、このルールに従わないと確認済証を出してもらえない、ということはありません。
法律の体系が異なり、建築基準法と建築紛争予防条例は連動しないのが大前提です。
ただし、説明会の質疑応答の中で「説明会で合意するまで建築確認を申請しないように」だとか「説明会で合意するまでは工事に着工しないように」という申し入れがあり、これを建築主が認めてしまえば建築確認申請や工事着工は住民との合意に達するまでできません。
したがって土地オーナー(建築主)は、「確認申請や工事着工」と「住民との話し合い」ははっきりと区分しておくのが原則です。
③建築紛争予防条例が定める紛争解決手続き
建築紛争予防条例の規定にある調停やあっせんは、近隣住民と建築主の両者が合意しない限り、手続きに入れないのが原則です。
そして、建築紛争予防条例の調停や斡旋では、「自治体は期間を定めて工事着手の延期や工事の中止を建築主に要請できる」という規定があります。
この規定で、工事着手の延期や工事の中止をすることができます。
建築主は、地方自治体の調停や斡旋に応じる場合、工事の中止も覚悟しなければなりません。
4.近隣対策のチェックポイントとトラブル事例
(1)近隣対策のチェックポイント
近隣住民へ説明する際に、次のようなチェックポイントがあります。
□ |
土地オーナーが普段から良好な近所づきあいができているか |
□ |
土地オーナーを快く思っていない隣人がいるか |
□ |
隣接した土地所有者と面積や塀などを巡り争っていないか |
□ |
過去に類似の紛争事例があったか |
□ |
近隣からクレームが出ないよう、法令を遵守している |
□ |
建築工事ばかりではなく、解体工事の際の騒音、振動、ホコリ等で近隣に迷惑をかけないよう配慮できているか |
□ |
建築会社選びの際に、近隣対策についてどう考えているか各社に聞いているか |
□ |
近隣説明会が必要か、個別対応か、説明対象の範囲など十分打ち合わせたか |
□ |
近隣家屋の事前調査など、トラブルの事前回避の為の対策は万全か |
□ |
近隣のあいさつ回りの前に配慮すべき近隣のリストをつくっているか |
□ |
地方自治体の条例や指導要綱、行政の街づくり方針を理解しているか |
□ |
建築会社の現場責任者は、近隣対策を任せられる担当者かどうか。現場責任者は、土地オーナーの考えを汲んでくれるか |
□ |
建築工事予算の中に、はじめから近隣対策費が計上されているか |
□ |
高額な金銭要求や実現不可能な設計変更要求をしてくる人に、毅然とした態度で臨む覚悟をしているか |
(2)近隣住民とのトラブル事例
▼反対運動で設計変更したのに、計画中止となった
①反対運動が起きたので規模縮小して設計変更
歯科のドクターが1~2階を診療所に、上階を自宅兼賃貸アパートにする7階建てのマンション建設を計画しました。
地域的には、路線商業といい、商店街にあり、道路も幅員が12mほどあり、法的には問題ない計画でした。
ただ、商店街の裏手側の住宅街の人たちからの反対運動が大きくなってしまい、「日照権を守れ」という声が日に日に激しくなりました。
ドクターは地元の大地主だったため、地域への配慮もあり、結果的に大幅な設計変更をし、診療所+自宅に変えることにしました。
②設計事務所は建設会社は大きな見込み違いで、事業化に向けてマーケティングしていたものがすべて無駄になってしまいました。
企画段階で、近隣からの反発が予想できるようであれば、オーナーの近隣対策に対する考え方をよく聞き、それに対して意見交換しておいた方が良いでしょう。
建築基準法違反でなければ、反対の声に押し切られるのではなくうまく収益を上げられる建物にし、近隣住民との折り合いをつけるのがベストです。
▼事前の根回しなしでペット共生型をアピールしすぎて失敗した
①ペット共生型マンションであることをおしだしすぎた
近隣住民へのあいさつ回りの際に、「賃貸住宅を建設する」ことだけ伝えればよかったのに、最近話題のコンセプト型マンションであることが誇らしくなってしまい、「ペット共生型マンション」であることを触れ回ってしまった土地オーナー。
②地域内の反対の声があがりすぎ計画断念
地域内にペットの糞の始末ができない人やしつけができていないなど、ペットマナーの悪い人たちがいて、噛みつき・吠え声等に対する否定的な声があり、大反対され、結果計画を中止することになりました。
▼境界裁判を起こされて、着工が大幅に遅延した
①賃貸マンション建設計画に猛烈な反対をされる
とある土地オーナーが、首都圏の住宅地に、5階建てマンションの建築を計画しました。
あいさつ回りの際、大きな問題はありませんでした。
ですが、建築計画を説明し建物が5階建てになるとわかった途端、隣人が難色を示し建築計画に対して猛烈に反対運動をはじめたのです。
②こじつけの境界裁判を起こす隣人
隣人は、ただ反対運動をするだけでなく「建築図面の敷地境界は間違っている」と主張をはじめ、それまでの境界より1mほど計画地に寄った位置に、自分でロープをはりめぐらせたのです。
そして全部で10坪ぐらいの土地に「ここは私の土地」と訴えを起こしてきました。
明らかに嫌がらせですが、【敷地境界紛争】として裁判になりました。
③裁判で着工が大幅遅延
最終的に、土地オーナー側の主張が認められ、裁判所から排除命令が出たものの、境界確定をもって工事開始となったため、半年以上工事の開始が遅れました。
入居者募集計画も大幅にずれてしまいました。
▼ごねる近隣住民の金銭要求を断固拒否して解決した
①早朝からの計画説明の要求
都内の住宅地で建築計画をしった近隣住民が、朝の6時から土地オーナー、設計士、建築会社に「説明に来い」と呼びつけてきました。
それも1度や2度ではなく、何度も呼びつけ、1回行くと何時間も続けなかなか解放してくれないというひどい嫌がらせでした。
②度重なる説明要求ののち、金銭を要求する近隣住民
こうした呼び出しが何度も繰り返し、いい加減嫌気がさしてきたころ、「誠意を示せ」と金銭要求をほのめかしてきたのです。
相手の狙いがわかりました。
③金銭要求を拒否して無事解決
土地オーナーは相手のしつこさに気持ちが折れかけ、お金で解決をしようとしましたが、設計士と建築会社が強く反対し、押しとどめました。
「説明に来い」という呼び出しに対し10回まで説明要求に対応したあと、十分に誠意を示した、と判断しその後の呼び出しは丁重にお断りしました。
最終的には、一切金銭を払わずに決着できたのです。
まとめ
アパートやマンションの建設計画をはじめると、ほとんどの場合近隣住民からネガティブな反応が出てきます。
しかし、早め早めの対応をしたり、対策方法を理解しているだけでぐっとリスクが削減できます。
▼日頃から近隣住民との関係性を良好に保っておくこと
▼近隣対策に慣れている建築会社に依頼すること
等がポイントとなります。
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