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賃貸物件といえばアパートやマンションが真っ先に思い浮かぶが、一軒家を賃貸する「戸建賃貸経営」が最近人気だ。まだ数は少ないがそのニーズは高く、不動産投資家からも注目されている。複数の戸建て住宅が連なったようなテラスハウスも人気だ。
戸建賃貸経営には、こんな特長がある。
- 一軒家は人気があるのに賃貸物件は非常に少ないため、入居希望者が殺到する
- アパート、マンションと比べると必要資金は少額なのに、高めの家賃設定が可能
- 土地の場所・広さ・形状の制限が少ない
特に、駅からやや離れた土地や、狭小地・変形地を有効に活用できる点が魅力だ。この記事では、戸建賃貸経営の8つの魅力について説明する。
1.入居者がすぐに見つかり、空室になりにくい
一軒家は人気があるが、戸建て賃貸物件の数は少ない。その需要と供給のギャップから入居者が殺到するので、空室リスクが非常に少ない。
賃貸物件の中で、戸建の割合はたったの1.4%しかない。一方で、戸建で暮らしたい人の割合は、全国平均77.7%、地方圏81.2%(国土交通省 平成17年度土地白書)と非常に高い。この需要と供給の極めて大きなギャップが、オーナーとして戸建賃貸経営を行う魅力のひとつだ。
しかも、賃貸物件として出回っている一戸建てのほとんどは、自宅用として建てた一戸建てを転勤などを理由に貸し出しているものであり、賃貸用に建てた物件はさらにごく少数だ。そんな状況で賃貸専用の物件を建てれば、いっそう引く手あまたになる。
賃貸仲介業者によっては、一戸建ての空き物件情報を求める声があまりに多いことから、空室待ち予約リストを作っているところまである。「一軒家に住みたいが、購入するほどの資金はない」という人はたくさんいるのだ。特に実家が一軒家だった人ほど戸建てへの憧れが強い。こうなってくると、空室期間はほとんど発生しない。
また、一軒家を希望する人は家庭持ちの世帯が多い。子どもの学校なども関連してくるので、長く住んでもらいやすい。
2.家賃相場よりも賃料を高めに設定できる
人気があって数が少ないものは、値段が高くなる。戸建賃貸も例外ではない。需要と供給の大きなギャップにより、家賃はアパート・マンションの相場よりも1割以上高く設定できる。物件の場所や広さにもよるが、都心部やベッドタウンであれば15万円前後の家賃にするのも無理な設定ではない。駐車場を作れば、その利用料も家賃に上乗せすることができる。
また、高い家賃を支払える入居者は収入が高めであり、社会的信頼性が高いことが多い。そのため家賃滞納や隣人トラブルなどが起こりにくいことも戸建賃貸のメリットだ。
3.あまりお金をかけずに始められる
戸建賃貸経営は少額の資金で始められるのも魅力のひとつだ。坪単価や広さにもよるが、木造であれば、1戸あたりの価格は800万円〜1200万円ほどを見ておけばよい。
戸建は一戸一戸が住宅に求められる一通りの設備を備えているので、アパート・マンションよりも付帯工事や設備工事の費用比率が高く、坪単価は割高になる。それでも延べ床面積が小さくなるため総額では小さい。
また、戸建では建物管理費用がかからないことが多い。管理費用はエントランス・階段・エレベーターなどの清掃・メンテナンスのために管理会社に支払うものだが、戸建にはこういった共用スペースがないので不要だ。この点はオーナーにとっても入居者にとってもありがたい。
建築費についての記事:アパート・マンション経営における建築費と資金について
4.高利回りが期待できる
説明したとおり、戸建賃貸の賃料はアパート・マンションの相場よりも高めに設定でき、かつ必要資金が少額だ。そのため利回りは高く、短い期間で投資回収できる。仮に家賃が15万円、建築費が1000万円だとすると、表面利回りは
15万円×12ヶ月÷1000万円=18%
と、非常に高い。仮に家賃18万円であれば表面利回り20%を超え、建築費1000万円を5年以内に回収できる(実際は各種経費がかかるのでもっと期間はかかる)。逆に想定よりも低くなり家賃12万円だとしても利回りは14.4%なので、7年間で投資回収ができる。かつ、空室になりにくいことから計画がずれにくい。
投資回収してしまえば、以降の家賃収入はそのまま利益になる。老後に備えた資金確保としても魅力的だ。もちろん実際はここまでうまくはいかない。退去時に原状回復費がかかるし、修繕費もかかる。それに可能性は低いながらも空室発生期間による収入減少がありうるからだ。だがそれを差し引いても、この収益性の高さは非常に魅力的だ。
利回りについての記事:利回りの意味と計算方法はアパート・マンション経営の必須知識
5.立地に左右されにくい
賃貸物件において立地は非常に重要なポイントなのだが、一軒家てなら駅から遠くても良いという人はたくさんいる。事実、戸建は最寄駅から徒歩25分〜30分でもすぐに借り手が見つかる。
以下の様な要望が叶うのであれば、少しくらい駅から遠くなっても構わないという人は多いのだ。
- 子どもの大声を隣人に指摘されることなく生活したい
- ガーデニングができる庭が欲しい
- 昔から一軒家で暮らしたかった
また、戸建てを選ぶのは家族持ちが多く、かつ住まいの決定権を握っているのは多くの場合は奥さんだ。これらも戸建賃貸が立地によらず人気がある理由だろう。夫の通勤よりも、妻の日常生活が優先されるということだ。それに、お子さんがいれば車の購入率が上がるため、駐車場付きにすればなおさら立地の重要度は下がる。
6.変形地や狭小地に強い
アパート・マンションは長方形型に土地を使用するため、変形地に建てるとデッドスペースが多くなる。また、狭小地だとそもそも建てられないことも多い。そういった土地でも、戸建てであれば有効に活用できる。
戸建は一棟ごとに分かれているため、図のように一棟一棟の建てる位置を調整することで、変形地を有効に活用できる。また狭小地であっても、一棟であれば30坪以下の土地でも建てられるし、50坪の土地に2棟建てる技術を持つ企業もある。スペースを有効に使え、土地の持つ価値を最大に引き出すことができる。
7.いざというときに売却しやすい
万が一賃貸経営がうまくいかなかったときには、物件を手放すことも考えられる。そのような不測の事態にも、戸建て物件は売却がしやすく資金流動性が高いので、柔軟な対応が可能だ。
アパート・マンションは一棟が大きいので、売却額が大きい。かつ、一般人は買わないので買うのは投資家だけだ。だが戸建ては一戸単位がそれほど大きくなく、売却額が小さい。かつ一般人も購入するので、中古住宅として市場に出せる。
さらに、需要が大きいため、買い手は比較的見つかりやすい。資金繰りに困っているときはすぐにでも売りたいので、売れやすいのはとても助かる。
8.節税効果が高い
賃貸住宅を建てると、土地の固定資産税は更地の6分の1に、都市計画税は3分の1に軽減される(200㎡まで。超えた分はそれぞれ1/3、2/3)。相続税も大きく減少する。
また、所得税と住民税も減税できる。というのは、経費を他の所得と合算することができるためだ。仮に賃貸経営が赤字であっても、給与など他の所得と通算することで所得税と住民税を減らすことができるし、減価償却費も所得を減らすことができる(例えば木造1000万円の物件なら、46万円を22年間、経費計上できる)。つまり給与収入がある場合はそれと合わせられるので、所得税と住民税の支払額を減らすことができるのだ。
税金全般についての記事:土地や建物にまつわる税金の基礎知識
固定資産税についての記事:土地の固定資産税・都市計画税をアパート・マンション経営で軽減!
相続税についての記事:1000万円の節税も可能!相続税は土地活用で減税できる
戸建て賃貸経営のデメリット
これまで戸建賃貸の魅力ばかりを説明してきたが、当然ながらデメリットもある。主なデメリットは3つだ。
(1)空室になったときのダメージが大きい
戸建賃貸はアパート・マンションと比べれば戸数は少なくなるので、空室が1戸出れば収入が激減する。もちろん空室になりづらいし、なっても入居者は見つかりやすい。とはいえ必ず見つかる保証があるわけではない。仮に家賃15万円の物件が4ヶ月間空室だったとすると、一気に60万円の収入減だ。この影響は大きいので、空室リスク自体は少ないが、なった場合の影響の大きさは理解しておこう。
(2)原状回復費用が大きい
ワンルームマンションなどと比べて1戸が大きいので、退去時の原状回復費用がかさむ。壁紙を張り替えるにしても壁の面積が広いので大きな金額がかかる。かつ、戸建賃貸の入居者は長く住み続ける傾向があるので、そのぶん部屋の汚れ、キズ、破損なども積み重なるので、退去ごとにそれ相応の金額がかかると考えたほうがいい。
(3)地域住民との付き合いでトラブルがおこりうる
アパートやマンションは隣人と壁がつながっているが、戸建ては離れて建っている。そのため騒音によるトラブルは少なくなるのだが、異なる種類のトラブルが発生しうる。例えば町内会の役割などのご近所付き合いが必要な地域もあり、入居者が嫌がったり、参加しないことによって問題が起こることがある。アパートやマンションの賃貸物件に住み慣れている人はご近所付き合いに慣れておらず、必要性も理解できないことがあるので、町内会などがある場合は、入居前に説明しておこう。
まとめ
戸建賃貸経営にももちろんリスクはあるだが、それを補ってあまりある魅力がある。アパートやマンションのほうが大きな初期費用がかかるぶん、収入の金額も多い。戸建賃貸経営はローリスク・ミドルリターンの土地活用法といったところだろうか。
戸建賃貸物件も、企業によって建築費やデザインなどが全く異なる。当社サービスでは戸建賃貸に強みを持つ企業を無料でご紹介しているので、まずは土地活用無料診断をご利用いただきたい。アパートやマンションに強い企業をあわせてご紹介することも可能なので、戸建とアパマンを天秤にかけて条件比較するのもお勧めだ。